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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
揺れ出した心
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のが先か……」

「こちらのポーションがなくなるのが先か」とアルゴが言おうとしたところで、マサキが前に出た。

「俺が隙を作る。その間に攻撃してくれ。あのHPなら、一回仕掛けられれば削りきれるだろ。……悪いが、アルゴ。ピックを一本貸してくれ」
「なっ……本気で言ってるのカ!?」
「ああ」

 アルゴはマサキの口から出てくる言葉に目を見張るが、一番驚いたのは、マサキの表情に対してだった。彼には、トウマやアルゴが拭いきれていない死への恐怖や不安が全く感じられないのだ。まるで、自分(・・)だけ(・・)()絶対(・・)()死なない(・・・・)()いう(・・)確信(・・)を持っているかのように。

「…………」

 アルゴはマサキの表情を不審に感じながらも、右の腰にぶら下がっているピックを一本、マサキに投げた。マサキはそちらに目をやることもなく片手でそれをキャッチし、さらに一歩前に出て、オオカミと一体一で対峙した。右手にピックを、左手に柳葉刀を持っているが、その手は両方ともだらりと下がったままだ。

 ――考えろ。想像しろ。あのオオカミの一挙手一投足を。
 マサキの脳が超高速で回転を始め、脳内でオオカミの攻撃までの道筋(プロセス)がシミュレートされる。オオカミの脳内で命令が電気信号としてシナプスの間を駆け巡り、運動神経に到達。それに従って筋肉が動き、獲物(マサキ)に飛びかかる。

 その時、オオカミの毛並みと同じ闇色に染まった草原を一陣の風が吹き抜けた。それを合図にオオカミがマサキめがけて土を蹴り、突進を開始し、マサキは微動だにせずそれを待ち構える。数瞬後、マサキに肉薄したオオカミがマサキの頭を食いちぎらんと飛び上がる。
 しかし、マサキはそれを待ち望んでいたかのように頭を一個分だけ左にスライドさせた。オオカミの牙がマサキの顔の右側すれすれを貫き、マサキの頭はオオカミの右肩部分に滑り込む。それだけではオオカミのタックルを喰らい、追撃を受けてしまうが、マサキはオオカミの右前足を掴むと同時に右腕をその後ろ頭に回し、突進と同じ速度で体を仰け反らせ、後ろに倒れこみながら回した右腕でオオカミを上から押さえ込んだ。オオカミは思わぬ方向からの圧力に対処することが出来ず、着地に失敗して草の上に巨体を投げ出してしまう。マサキはオオカミの後ろ頭に回してあった右手に握られているピックを振り下ろし、オオカミの頭を草原に縫いつけた。

 オオカミがダメージを嫌がるように鳴き声を上げ、縫いつけられた頭を自由にしようと懸命にもがく。しかし、それが一瞬の、そして最大の隙となった。アルゴとトウマが一気に飛び出し、ライトエフェクトを纏いながら武器を振るい、オオカミのHPを確実に削り取る。が、それでも数ドットが残ってしまい、その間にオオ
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