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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
揺れ出した心
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 たまたま攻撃が最後になったために狙われたのだから、このオオカミはかなり不運だったと言える。だが、このオオカミの不運はこれで終わらなかった。
 トウマの攻撃を察知したマサキが攻撃の威力と方向から吹っ飛ばされる方向と距離を算出し、予測地点に先回りしていたのだ。マサキとの距離が一メートルを切った時点でオオカミもその存在に気付くが、その時にはもうマサキの握る柳葉刀が黄色い光を帯びていた。マサキはそのまま《ライトネス》で転がるオオカミを切り裂き、ポリゴン片に変える。

 この一連の動きにオオカミも多少取り乱した様子を見せたが、何とか体勢を整えると、今度はトウマに向かって飛びかかった。
 合計で四体のオオカミが時間差を付けてトウマに襲い掛かるが、今度は全方位からではない。トウマは三体を左右に跳んでかわすと、四体目を剣で弾き、転がったところを《バーチカル》で攻撃する。先ほどアルゴが包囲網を抜ける際にマサキが斬り飛ばした個体であったため、一撃でHPバーを消滅させることに成功する。
 技後硬直が切れると同時にトウマは動き出し、残り三体のうち最前列の一体に肉薄、そのまま《バーチカル》で切り裂くが、その瞬間に両隣の二体が硬直中のトウマに反撃の牙を剥く。しかし、いつの間にかトウマの隣にポジションを取っていたマサキがさっと飛び出した。マサキはそのままトウマとオオカミの間に割り込み、目の前の一体を柳葉刀の柄で殴りつけ、勢いを失ったところで瞬時に体を仰け反らせると、オーバーヘッドの状態で蹴り飛ばし、もう一体に衝突させた。
 マサキは手を頭の後ろに突いてバク転、空中で味方と体当たりすることになってしまった二体のオオカミを尻目に、先ほどトウマに斬り飛ばされた一体へと加速し、《リーバー》で弱点の頭を切り裂いた。
 ここでようやく絡み合ったまま転がっていた二体が立ち上がり、半ばやけのような――もちろんAIにそんなものがあるはずはないのだが――攻撃を繰り出す。が、トウマがこれをしっかりとパリィし、防ぎきったところを二人がかりで仕留める。野性の本能なのか、それともシステムの命令なのか、それでも最後の一体が攻撃を仕掛ける。しかし、こうなった以上は所詮一体の雑魚モンスター。二人に敵う訳もなく、あっけなく体を淡い光の破片へと変え、草原に散らした。


「ようやく片付いたか」

 マサキがポーションを呷りながら言うと、トウマも頷きながらポーションのビンの蓋を開け、中の液体を口に含んだ。苦味と酸味のあまり美味とは言いがたいハーモニーを舌の上で聞き終え、ビンが役目を果たして消滅すると、二人は黙って走り出した。
 今頃は奴らの親玉を一人で相手取っているはずの、怪しい情報屋の許へ。


 数分後、マサキたちが五体のオオカミと対峙していた場所から三百メートルほど離れた場所で、二人は巨
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