アインクラッド 前編
揺れ出した心
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「……やれやレ。こいつは面倒なことになっちまったナ〜」
マサキに示された先でこちらを睨むオオカミを見て、アルゴは困ったように首を振った。が、それでもすぐに武器を装備する辺り、流石と言うべきだろう。相変わらず口調は軽いが、表情は引き締まっている。
「あのオオカミ、名前は《シャドーハントウルフ》。HPバーが二つあることから分かるとおり、フィールドボス扱いダ。攻撃方法は《ナイトウルフ》と変わらないが、素早いからレベル2じゃあ逃げるのは厳しいナ」
再びマサキが数メートル先のオオカミを見据えると、それに反応したように、オオカミも喉を唸らせて威嚇してくる。するとその時、マサキの眼前にパーティー申請のウインドウが出現した。申請者はアルゴだ。
「後から経験値やアイテムドロップで揉めるのはご免だからナ。パーティーなら経験値は均等に入るからいいとして、アイテムはドロップした奴の者ってことでどうダ?」
「構わない」
「分かった」
「……それじゃ、オイラが《シャドーハントウルフ》のタゲを取るから、二人は《ナイトウルフ》を相手してくレ」
言い終わるか終わらないかのところで、答えは訊いていないとでも言わんばかりにアルゴは右手に持ったピックを投げた。
ヒュッと風を切る音を立てながらピックはオオカミの前足に突き刺さり、それを合図にしたかのように《シャドーハントウルフ》がアルゴに向かって土を蹴る。それと同時にアルゴが右へダッシュし、《ナイトウルフ》の包囲網からの脱出を試みる。《ナイトウルフ》もそれに反応して正面の一体がアルゴに飛びかかるが、そこにマサキが割り込み、《ライトネス》でそれを阻止。その隙にアルゴが包囲網の外へ飛び出し、そのまま走り去る。
《シャドーハントウルフ》もその後を追い、後には五体の《ナイトウルフ》とマサキ、トウマが残された。
マサキが一度周囲をぐるりと見回すと、先ほど包囲網に開けた穴は埋められていて、再び五体のオオカミがマサキたちを全方位から睨んでいた。
「……マサキ、どうする? さすがに五方向から同時攻撃されたらまずいぞ」
「俺が捌く。お前は一度目の攻撃の隙に外側に出て、後ろから攻撃してくれ」
「全方位攻撃を一人で捌くなんて、そんなこと……」
出来るはずがない、と言おうとしたが、トウマはその言葉を飲み込んだ。マサキの目には、不安や恐怖の色が全くなかったのだ。それどころか、自信に満ちているようにさえ感じられる。
その自信が一体何処から来るのか、トウマには分からなかったが、《ナイトウルフ》の連携攻撃を初見で見切って見せたマサキのセンスに懸けてみることにした。
黙って頷き、マサキから数歩遠ざかる。その分一体のオオカミとは距離が近くなってしまったが、その一体は、否、今二人を取り
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