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英雄伝説〜西風の絶剣〜
第86話 殻を破れ
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 鉄機隊の戦いが二つ終わった。リィンはエンネアの異次元ともいえる弓裁きに翻弄されながらも勝利をつかみ取り、フィーはアイネスの苛烈な一撃を乗り越えて勝ちを拾った。


 残るはラウラのみ、彼女は魔法陣を超えるとそこは円形に広がる大きな足場の上だった。


「空中に浮かぶ闘技場か?」


 ラウラは警戒しながらも大剣を抜いて辺りを見渡した。


「待っていましたわ」


 すると気配が生まれラウラが振り向いた方にいつの間にか誰かが立っていた。


「アルゼイドが相手ですか、本命は外れましたけどまあ妖精を相手するよりはマシですわね」
「フィーを侮辱するか?あの子は強いぞ?」
「別に侮辱したつもりはないですわ。マスターに気にかけられているあの男とアルゼイドの娘である貴方と比べたらやる気が起こらないと言っていますの」


 ラウラの眼光にデュバリィは溜息を吐きながらそう言った。


「よほどアルゼイドが嫌いなのだな?過去に何かあったのか?」
「別に何もありませんわ、ただ気に入らないだけですの。ただ譲り受けただけの名前を誇らしげに名乗る貴方方が心底に」
「……Sの名か」


 ラウラは自身の名に付けられた意味を思い出して彼女が何を気に食わないでいるのか理解した。


「このSはリアンヌ様の名字である『サンドロット』の名を譲り受けたモノ……そなたにどうこう言われる筋合いはない」
「そんなことはありませんわ!この私を差し置いてサンドロットの名を授かるなど……キィー!気に入りませんわ」
「理解できぬな、リアンヌ様は既に遠い過去の人だ。尊敬する気持ちは分かるがなにをそこまで怒るのだ?」
「リアンヌ様は生き……ゴホンッ、とにかく気に入らないものは気に入らないんですの」


 何かを言おうとしたデュバリィはそれを飲み込んで剣をラウラに付きつける。


「ラウラ・S・アルゼイド!雛鳥である貴方の実力、この私が測って差し上げますわ!」
「雛鳥か……ならしっかりと叩き込んでやろう、私の力をな」


 二人はそう言うと武器を構えて相手の出方を伺う。


「……ふっ!」


 先に踏み込んだのはラウラだった、氣の操作によって上昇された身体能力はまるで爆発するかの如くデュバリィの眼前に立っていた。


「中々早いですわね、でも……」


 それに対してデュバリィは冷静に剣を振るいラウラの大剣を止めた。


「ぐう……!」
「この程度ならかわすまでもありませんわね!」


 デュバリィは大剣を押し返してバックステップで距離を取る。


「今度はこちらの番ですわ!」


 デュバリィは剣を構えて一直線に突っ込んできた。


「はぁっ!」


 
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