第八十五話 プラーカ窓外投擲事件
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冷静だった。
「ハッキリ言ってしまえば、ボヘニア一地方だけで、ゲルマニアと真正面から戦争をするのは無謀だ。お前はさっきプラーカを解放と言ったが、早い話が占拠すると言っているような物。ゲルマニア側からしたら、敵はボヘニアのプラーカに立て篭もって居ると喧伝するようなものだ」
ヂシュカの案にダーボルも、『むう』と唸り少し考えを改める。
「つまりはこういう事かヂシュカ。ゲルマニア正規軍と真正面から戦えば負ける……だから、プラーカを捨て、どこかに潜み、非正規戦を繰り返えして、ゲルマニアの疲弊を誘うというのか?」
ヂシュカはダーボルの発言に、『ほう……』と心の中で唸った。まるっきり無能でも無いらしい。
「そうだ。時間が経てば、何時までも皇帝の座を空けておく訳には行かない。そうなれば、次の皇帝を選ぶ為に敵の足並みも乱れ、我らにチャンスが訪れるだろう。すぐにでもプラーカを脱出するんだ」
「し、しかし、プラーカの市民達には、蜂起の指令を出してしまった。今から中止の命令を出しても、昨日のフシテツ神父の火あぶりの件もあって、市民は殺気立ってる。止めようとしたって止まらないぞ?」
「それをどうにかするのがお前の役目だ。なにが何でも中止させて、被害を最小限にするんだ」
ヂシュカの強い口調に、ダーボルは押され始めた。
だが、名案が思いついたのか、したり顔になってヂシュカにその名案を話し始めた。
「ヂシュカ。いい事を思いついたんだが、プラーカ蜂起をあえて放置して、その隙に脱出すれば……」
ダーボルは最後までその名案を言う事ができなかった。ヂシュカの鉄拳が、それを遮ったからだ
「何をする!」
「それ以上言ったら殴る」
「もう殴っているだろうに……」
ダーボルの突込みを無視して、ヂシュカはダーボルに詰め寄った。
「いいかダーボル。フシネツ神父の遺志は、最小限の流血で独立をする事だった。それに、そんな事してみろ、プラーカ市民どころかチェック民族全てに見離されるぞ」
ヂシュカは、ここで初めてフシネツ神父の遺言をダーボルに話した。カリスマ的人物だったフシネツ神父の遺言を聞けば、少しはダーボルの頭が冷えると思ったからだ。
「最小限の流血で独立だなんて夢みたいな事を……」
だが、ダーボルには効果が無かった。
言ってみただけで、それほど効果を期待してなかったヂシュカは更に続けた。
「そうだ。結局は夢見たいな話だった。だからフシネツ神父は一人で逝かれたのだ。いいかダーボル、軍事の一切を私に任せろ。勝つ事は不可能だが負けないぐらいの事は出来る。そうすれば独立のチャンスが回ってくるかも知れない。だからお前はプラーカ蜂起を是が非にでも止めろ。いいか、いいな?」
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