第八十五話 プラーカ窓外投擲事件
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ハルケギニア二大大国の一つであるゲルマニア皇帝は、呆気なくこの世を去った。
主のいなくなった寝室を沈黙が支配する。
「……」
「……」
この沈黙をダーボルが破った。
「撤収する。だがその前にプラーカ城を放火し、敵の目を欺く。火メイジの皆は放火して回ってくれ」
「承知した」
火メイジのチェック貴族数人が、それぞれ散っていくと、予め用意しておいた火種に放火する。火は各所で燃え上がり、城内の各所で混乱が起こった。
寝室から出て、誰も居ない廊下を走るダーボル一派は、城のあちこちで火の手が上がった事を確認した。
「火が広がっているな」
「よし、撤収だ!」
「おう!」
チェック貴族達は、途中で詰め所襲撃の者たちと合流し、火事の混乱に乗じて撤退に成功した。
守衛や親衛隊を予め殺害しておいた為か、プラーカ城の火事は発見が遅れ、千年の歴史を持つ皇帝の居城は炎に包まれた。
☆ ☆ ☆
プラーカ城の火事は、一夜明けた朝方になっても鎮火の気配を見せなかった。
それどころか、風の乗って火の粉が堀を挟んだ他の貴族の屋敷の燃え移り、プラーカ市は大規模な火事が発生していた。
プラーカ城の奉公するゲルマニア貴族は、せめて自分の屋敷は守ろうと、消火活動をしながらも、財産の一部を安全な風上の場所へ移動させていた。
一方の市民達は、日が昇っても黒煙を上げるプラーカ城を不安そうな顔で見ていた。
ダーボルに率いられたチェック貴族の暴走は第二段階に入る。
即ち、プラーカに住まう、非ゲルマニア人全ての一斉蜂起だ。
皇帝殺害に参加したダーボル一派は、撤収後も殆ど一睡もせず、一斉蜂起の段取りを進める為、プラーカ各所に走った。
混乱が続くプラーカ市内の「麦畑の馬蹄」亭の一室を臨時の司令部にし、ダーボルは次々と入る蜂起の返答に朝食を取る暇も無かった。
「ふふふ、貧民街の連中は蜂起に賛成したか。よしよし」
ダーボルは、休む暇も無い感覚を大いに楽しんでいた。
「貧民街の連中に、武器を渡してやってくれ。場所はこの羊皮紙に書いてある」
そう言って、連絡員に武器の場所が書かれた羊皮紙を渡し、別の連絡員の報告を聞く。
ダーボルがプラーカ城から戻ってから、このサイクルを何度も繰り返していた。
そんな時、廊下が騒がしくなった。
「ふ、ヂシュカの奴、遅かったな」
ダーボルの言葉と同時に、粗末な木製のドアが蹴破られ、碧眼のヂシュカが入ってきた。
「城の火事はお前達の仕業か!」
開口一番
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