第八十五話 プラーカ窓外投擲事件
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衛部屋だ」
チェック貴族は去り、鮮血が散った詰め所には、生きている者は誰もいなかった。
親衛隊の詰め所で惨劇が起こっている頃、チェック貴族数人が皇帝の寝室に近づいていた。
「護衛はどの程度いる?」
「そうだな、ざっと見て二三人と言った所か」
「よし、手早く済ませよう」
そう言って、リーダー格のチェック貴族の男『ダーボル』は、手を軽く振ると隠れていた他のチェック貴族達が新鋭隊員に襲い掛かる。
「……なにっ」
「ぐえ」
彼らはこの時の為に襲撃の訓練をしてきたのか、貴族ながらもよく訓練された兵士の様に、手早く親衛隊員を駆逐した。
「排除したぞ」
「よし、ゆっくりと中に入れ」
一人のチェック貴族が、巨大な扉のドアノブに触れると、それを回し音立てないようにゆっくりと扉を開けた。
皇帝は寝室中央には巨大な天蓋付きのベッドがあり、そこには枯れ木の様な細い腕をしたゲルマニア皇帝兼ボヘニア国王コンラート6世が寝息を立てていた。
「のんきに寝てやがる……」
「どうする? どのように血祭りに上げるんだ?」
「そうだな……」
ダーボルは、数秒ほど考えるとニヤリを不敵な笑みを浮かべた。
「この寝室の窓から、皇帝を突き落とそう」
「いいね!」
「この老人にはお似合いだな」
「フシネツ神父の敵だ」
一人、また一人と寝室に入って行き、遂には皇帝のベッドを取り囲んだ。
コンラート6世はまだ眠っていて、自分がチェック貴族らに囲まれ、風前の灯であることに気づかない。
チェック貴族達は、ゲルマニアの最高権力者の命が、自分達の手の平の上にある事に言いようの無い興奮に覚えた
「杖は奪ったな?」
「ああ、枕元に置いてあった」
「よし、やるぞ。我らの怒りを思い知れ」
皇帝を囲っていたチェック貴族は一斉に襲い掛かる。
杖が無ければただの非力な老人でしかないコンラート6世を、数人掛かりで持ち上げると寝室の窓まで移動させた。
「ふ? フガ??」
この時、ようやく目を覚ましたコンラート6世は、事態が上手く飲み込めず、老いで濁った目を白黒させていた。
「目を覚ましたぞ」
「丁度良い。人生最後の風景だ」
チェック貴族達は止まらない。
寝室のガラス窓をエア・ハンマーで砕くと、持ち上げていたコンラート6世を窓から放り捨てた。
「ひゃ、ひゃあああぁぁぁぁ……」
皇帝の寝室はプラーカ城でも比較的高い場所にあり、悲鳴を上げて落下するコンラート6世の姿が夜の闇に消えていく。
やがて下の方で、『グチャ』という、なにか硬くて柔らかいものが潰れる音を、風メイジ数人が聞いた。
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