七十三 正義と悪
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志が正義で、それ以外は悪か。
「そんなもん、知ったことじゃねぇ」
誰かの正義は誰かの悪。誰かの信念は誰かの疑念。誰かの希望は誰かの絶望。
誰かの理想は誰かの現実。
だから。
「天と地が引っ繰り返っても、俺が火の意志を選ぶことはない」
所詮、相容れないのだ。
光の中で眩しいモノしか見ていない相手には。
所詮、遠い存在なのだ。
現実では、自分の足許からイルカの足許までには、たかだか五歩くらいの僅かな距離しかない。
その僅かな距離が遠かった。
光の向こう側にいるイルカのほうへは、もう二度と行けないのだから。
だから。
「俺は俺の意志で、」
懐から手繰り寄せた巻物を全て、足許に落とす。
見覚えのある巻物に、イルカの眼が瞬いた。
それはかつて木ノ葉中忍試験、死の森で使ったあの“天”と“地”の巻物。
それぞれ一本ずつ下忍の班に配られている『天の書』と『地の書』の巻物を、五日以内に森の中心にある塔まで『天地』の巻物二種類を揃えて持って行くという内容の第二試験の課題がイルカの脳裏に思い出される。
「おまえらとは相容れない」
奈良一族の森に隠した本物の月光ハヤテの遺体が発見されて、捕まるのは時間の問題だ。
だからどうせバレるなら、とイルカを誘き寄せた。
そしてこの懐かしい場所で正体を告げたのだ。
波風ナルにとっては九尾の狐だと告げられた忌むべき処。
うみのイルカにとっては波風ナルを心から認めたところ。
そしてミズキにとっては己の人生の原点と呼ぶべき場所。
だが、内通者の行きつく道は決まっている。
捕まって生き恥曝すか、逃げて主の顔に泥を塗るか。
ならば第三の選択をとろう。
「な…なにをしている!?ミズキ!?」
中忍試験で使用された大量の『天』と『地』の巻物を、次の中忍試験でも再利用すべきではないか、と五代目火影に申告したばかりのミズキは、その件の巻物を持ち歩いていた。
万が一の為に懐に忍ばせていたが、まさかこんな場所で使う羽目になるとは。
「ミズキ…!馬鹿な真似はやめろ…ッ、」
巻物を発動させる。
足が埋もれるくらいに高く積み上げられた巻物から炎が沸き上がった。
それこそが火の意志だと言うように。
「やめろ…!ミズキ…!」
駆け付けるイルカを、炎の向こう側から見遣る。
以前の中忍試験の課題では、巻物が揃っていない状態で開けば、催眠の術式が施されている巻物によって眠らされ、失格となるという仕様だった。
その睡眠の術式を火遁に変更することを火影に申告していたミズキは、既に巻物の術式を変えていた。
睡眠から、火へと。
火影は火遁の威力を弱めるようにと命じてい
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