七十三 正義と悪
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「『暁』がどうしてできたのか知っているか」
不意に、話題が変わった。
いや、変えてくれたと言うべきか。
緊迫めいた空気が霧散し、綱手は重圧から解き放たれた。
ほっと胸を撫で下ろす。
火影としての矜持と意地で、震える身体と戦慄く唇を叱咤し、呼吸を落ち着かせてからようやく綱手は声を発した。
「…犯罪者軍団の設立など興味もない」
「そうやって頭ごなしに決めつけるからいつまで経っても平行線のままなのだろう?」
白フードの言葉に綱手は反論しようと口を開きかけ、しかし、すぐに口を閉ざした。
押し黙った綱手を白フードは暫し眺めていたが、やがて話の続きを口にする。
その話は、今まで犯罪者でしかないと思っていた五代目火影には、俄かには信じられなかった。
「“対話により争いをなくす”こと。それが当初の『暁』の信念だった。云わば慈善団体のような組織だよ」
「…な、に」
「もっとも今は、平和を目指す故に、戦争を引き起こそうとしているのさ」
しばらく綱手は二の句が継げなかった。
ようやっと硬直が解けた時、口にできた言葉は当然の反応。
「……矛盾している」
「そうだな」
綱手の反論に、相手は肯定を返した。
「だが戦争の痛みを知ることで平和のありがたみを世に知らしめようという考えも、わからなくもないのではないか?」
「…ではまさか、昔も今も『暁』の目的は、」
「やり方は違えど同じ平和を目指す同志と言える」
そこで思わず、綱手は路亭の屋根から飛び降りた。
同じ水面の上に降り立ち、白フードを睨みつける。
「そんなものが…そんなものが平和への道だと本気で信じているのか…!?」
声を荒げる綱手を、相手は白フードの陰から物静かに見つめた。
依然変わらぬ穏やかな眼差し。
怒鳴る自分に対し、怒りも怯みも哀しみも憎しみも湧き上がらない、感情の窺えないその様が不気味で、頭に上っていた血が徐々に下りてきた。
高ぶる感情を抑え込み、比較的口調を落ち着かせ、五代目火影は改めて問い質す。
「人柱力を集めているのも抜け忍の犯罪者ばかりなのも、戦争請負組織なのも、全て平和への糸口だとでも言うつもりか」
「だがペインはそう信じている」
白フードの返答に、綱手は無意識に拳を握った。
怒りと哀しみの感情のままに、爪が拳に食い込む。
「自来也を殺した奴か…」
苦々しげに顔を逸らした綱手に対し、白フードは今までの悠然さとは一変して、気まずげに首を竦める。
言葉を選んでいるようだった。
「その件だが、」
そうして、白フードは苦笑雑じりに真実を告げた。
「生きているぞ」
「は?」
「大蛇丸に救われたな」
しばらく綱手は
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