第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
その名はトーネード その1
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傍に連れ出された人物たちは、それ相応の容姿の持ち主だった。
容姿だけではなく。服装やその他に、SEDの配慮があったろう事は想像に何硬くない。
従って、国境検問所から先では、乗物から扱いまで、西ドイツと比べて劃然と、待遇がちがっていた。
氷細工の様な貌のユルゲンをはじめ、スラブ系の血が入っていて彫りの深い顔のヤウク。
彼らのような美丈夫の他に、眩いばかり美女にも心を踊らされた。
18歳という年齢の割には妖艶な美を秘めたベアトリクス、泣き黒子が印象的で、しっとりとした感じの典雅なハイゼンベルク。
何よりも、マサキを夢中にさせたのは、心を洗われる様な清らかさのアイリスディーナであった。
人間、美食になれると、どうしてもそれ以外のものがひどくまずく感じるものである。
マサキはなにか、味気ないここちがした。
さて、マサキの一行はボンから15キロほど先あるケルン・ボン空港に向かう。
ルフトハンザ航空の国内路線で、ミュンヘンにとんだ。
一時間ほどでミュンヘンに着くと、隣町のアウグスブルクに向かった。
マサキたちは、キルケの案内でアウグスブルクにあるメッサーシュミット本社を訪問した。
本社工場の脇に併設されている『メッサーシュミット技術者センター』。
総ガラス張りの5階建てビルの中では、欧州戦術機計画の主だった技術者たちが待機していた。
簡単な茶会の形で始まった、技術者との懇親会。
マサキは開口一番、心の内にある思いを伝えた。
「説明してほしい」
あの特有な淡褐色の眼で、マサキは部屋中のメッサーシュミットの役員らを、ねめ廻し、
「東ドイツと違って、産業の制限のない西ドイツ。
なぜ貴様らが、欧州各国と合同で戦術機開発をせねばならぬのだ」
紫煙を燻らせながら、問いただした。
木原マサキは噂通り、猫の目より変りやすい御機嫌様なのだ。
人々は、彼を連れてきたキルケ・シュタインホフの方をつい見てしまった。
若いキルケは、ただ赤くなっているばかりであった。
同席していたヴィリー・メッサーシュミット会長が、そのとき、初めて口をひらいた。
「お恥ずかしい話ですが、30有余年前の戦争では、欧州一……」
椅子より立ち上がった会長は、座っているときより老けて見える。
「いや、世界一の技術を誇っていたのです。
今思えば、ずいぶんと分不相応な暮らしをしたものです」
老会長の助け舟で、キルケもほっとし、社員たちも、わざと話題をほかへ、迷ぐらした。
「国民皆が勝てぬ戦いを勝てると信じ込み、必要以上に戦ったのです」
「そうか」
そういって、彼らのわきを通り抜け、窓辺に歩み寄る。
マサキは、5階の窓
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