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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
その名はトーネード その1
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 まもなくサングラスをかけた老人と見たことのない偉丈夫が来て、彼に慇懃に挨拶をした。
「木原マサキ君、かね……」
「どうした」
「君に一つ頼みごとをしたい」
既に、70は超えているのであろうとマサキは思った。
かけているミラーレンズの遮光眼鏡(サングラス)で、表情は読み取れない。

「改めて名乗ろう。わしはドイツ軍退役将校で、ドイツ連邦の先行きをいささか憂いている男だ。
君の話は、シュタインホフ将軍からも、詳しく聞かされていたが……
余りにも若いので、支那での話などは一概に信じられなくてね」
マサキは、動じもしない。
「突然の無礼、許してくれたまえ。
敗戦国ドイツはのう、モーゲンソープランにより厳しい産業規制によって割り当てられた工業製品しか作れなかった時期が長かった。
11年に及ぶ再軍備禁止と20年にわたる航空機産業への参加締め出し……
この影響は、いまだに続いている」

それは、マサキにも意外だったに相違なく、
「こんな所へ、今ごろ何しに」
と、舌打ちはしたものの、しかし、すぐ黙って聞き入っていた。
「それでな、日本の斑鳩公がこのわしに仕掛けてきた。
日本はモーゲンソープランの対象国でもないし、最前線でもない。
ドイツに代わって、欧州で戦術機メーカーが暴れる下地を作ってくれ。
とりあえず500万ドル出すと……」
(1978年当時のドル円レート、1ドル195円)
「つまり、日本のメーカーが欧州で暴れれば、困った米国が乗り出してくる。
そこでドイツが仲裁役に入ってきて、米国にいい顔をし、ソ連を抑えて、戦術機の世界シェアを増やすことを条件にするというわけだ。
ドイツが作った戦術機も日本が安く入手できるしのう」
マサキは、充分疑っている。
「わが国には欧州各国が共同設立したパナヴィア・エアクラフトという半官半民の企業がある。
わしらが作った会社じゃが、ここで戦術機開発をすることにしたものの……
プロフェッショナルの専門家がいない。
そこで君じゃ」
「貴様、俺の事をどこで聞いた」
と、マサキは、困ったような顔を見せて、
「ニューヨークのフェイアチルド社長から、ちょっとばかりね」
 これには、マサキも色を変えた。
無視できない何らかの支障をふと、彼にしても思わぬわけにゆかなかった。
「どうかね。
ここはひとつパナヴィアの参加企業、メッサーシュミット本社へ来て、見学でもしてくれぬかね。
ハルトウィック大尉も引率の一人としてつくから、君の上司、彩峰大尉も納得するであろう」

 ふと、マサキは変な顔をした。
男の言ったハルトウィック大尉を見るなり、内心落胆した。
筋肉質の逞しい体の偉丈夫であるが、白皙の美貌を湛えたユルゲンとは違い、興味をそそられなかった。
 
 東ドイツが、マサキの
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