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第二十二話 姉妹その十四

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「そうだったわ、孤独に耐えられる人は」
「少ないですね」
「もっと言えば私は見たことがないわ」
 庚は辛い顔で言った。
「むしろね」
「一人も」
「ええ、口ではどう言っても」 
 それでもというのだ。
「いざ自分が孤独の中に入ったら」
「耐えられないですか」
「真の孤独の中にはね」
「そしてあの方はその真の孤独の中にですね」
「生まれた時からよ」
 まさにその時からというのだ。
「いるしかなかったのよ」
「そうであったからこそ」
「それでよ」
「孤独の地獄の中で苦しんで」
「しかも出ることもね」
 このこともというのだ。
「出来ない、許されなかったから」
「夢見、贄として」
「姉さんの身体は何も見えないし何も聴こえなくて」
「五感がありません」
「それでも心の目や耳でわかるけれど」
 そちらで見聞きが出来ているというのだ。
「それでもね」
「そうしたお身体でもあるので」
「外に出ることもね」
「満足に出来ないですね」
「議事堂の巫女の様なものと言えば聞こえはいいけれど」
「その実虜囚とですね」
「変わらないわ、そうね」
 庚はこうも話した。
「彼、桜塚星史郎のね」
「お母上ですね」
「彼女とね」
「同じ様な立場ですね」
「けれど彼女は五感があったから」
 それでというのだ。
「実は出られたわ」
「あの場所から」
「そうだったけれど」
 それでもというのだ。
「姉さんは」
「出来ないですね」
「ええ、遠くのことまで見聞き出来て」
「夢で先のことまでそれが出来ても」
「五感がないから」
 それ故にというのだ。
「あそこから出ることもね」
「出来ないですね」
「周りは皆五感があるのに」
「あの方だけがない」
「そのこともよ」
 丁の身体のこともというのだ。
「姉さんを孤独にしているわ」
「生まれついてのことですし」
「尚更よ、姉さんを孤独から救えたら」
 ここでだ、庚は。
 苦い顔になって歯噛みした、そのうえで今は牙暁にだけ見せるその顔で彼に対して語るのであった。
「どれだけ有り難いか。けれど」
「それはですね」
「私は出来なかったわ、そして」
「もう一人のあの方が出てしまい」
「本来の姉さんを蝕んで」
 そうなっていっていてというのだ。
「そして遂には」
「あの方にとって代わり」
「本当によ」
「世界を滅ぼしますね」
「もう一人の姉さんは裏返しよ」
 牙暁に話した。
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