大魔闘演武開幕戦
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「ミネルバ様?大丈夫ですか?」
「・・・あぁ。大丈夫だ」
入場してきた一人の人物を見て顔が青くなっているミネルバ。前日にも同じ反応を見せていた彼女に虎の全員が心配そうな顔を見せるが、彼女は明らかに作られた笑いを見せながら答えていた。
「今日はやけに静かだな」
「・・・フッ」
ギルダーツも見覚えのある一人に声をかけるが、その人物は小さく笑うだけで何も答えない。ただ彼は一瞬どこかに視線を向けたかと思うと、再び顔を俯かせてしまった。
「なぁ、グレイ」
「なんだよ」
「・・・いや、やっぱいいや」
「なんだよ!!」
ナツは最後に入ってきた彼らの方を見て何かを感じたようだが、それに確信が持てなかったからか話題を打ち切る。話を振られてのに突然切られてしまったグレイは不満げな表情を見せていたが。
「全く・・・早く終わらせてほしいものだ」
「そう言うな。ここからすぐに競技パートに入るはずだ。その間にバレるはずがない」
「だといいーーー」
後方にいる背の高い二人の男は他者に聞こえないような小さな声でこの場から早く離れたいといった感情を漏らしていたが、腕組みをしていた男は自身に向けられる視線に気付きそちらを見る。彼のすぐ真横には、自身の方を一切視線を反らすことなく見つめ続けている水色の髪をした少年がいた。
「・・・なんだ?」
「何してーーー」
その視線を交わそうにも明らかに何かに気が付いている彼を無視することはできず問いかける人物。それに少年は何食わぬ顔で問いかけようとしたが、仮面をわずかにずらしたことではっきりと見えた彼の目に飲み込まれ、それ以上何も言えなくなる。
「・・・」クイクイ
「なんだ?」
しかしそれでも諦めきれなかった少年は男の服の裾を引っ張り彼を屈ませると、耳元で何かを囁く。それを受け、男は大きなため息をついたかと思うと、少年を肩車し始めた。
「これでいいのか?」
「うん!!いい!!すごくいい!!」
得体の知れない魔導士たちの集団。そのはずなのにそのうちの一人と戯れている少年に緊張感に包まれていた参加者たちの雰囲気が和らぐ。特に彼の所属するギルドの面々は顔を見合せていた。
「シリルの知り合いか?」
「昔のダチとか?」
「いや・・・あんな人記憶にないですけど・・・」
エルザとラクサスに問いかけられたウェンディだったが、彼女もその人物に心当たりがないようで首をかしげている。全員がその男の正体がわからずにざわついている中、一人の青年だけは、その人物をじっと見つめ、その視線に気が付いた男もまた、彼に視線を向けた。
「「・・・」」
互いに言葉は交わさなかった。しかしそれでも二人は相手が何を言いたいのかわかっているようで、口角を上げ視線を切る。
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