陰謀編 穢れた正義と堕ちた英雄 第3話
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深く頷いている。そんな彼に頷き返しながら、駿はこの場を後にしようと踵を返していた。
『……それに、お前のようなお調子者にはこの方が「良い薬」だろう? ふふっ』
だが、肩越しにニヤリと意地悪な笑みを浮かべる駿は、忠義をからかうように口角を吊り上げていた。普段は仏頂面しか見せない彼にしては、珍しい表情だ。
言い寄って来る女達には淡白だが、慕って来る子供には優しい……という傾向があると聞いた覚えはあるが、どうやら忠義は彼にとって、可愛い弟分に近い存在であるようだ。接し方が親戚の子供に対するそれである。
『んなっ!? タ、タチ悪いぃ〜……!』
『さ、Gチェイサーを停めていた場所に戻るぞ。帰ったらコーヒーの1杯でも奢れ』
『分かってるよっ!』
一方、忠義は複雑な表情で地団駄を踏んでいる。問題を起こした自分自身が始末書を書くより、自分の失敗で他人が始末書を書かされている方が、忠義のような性格の人間には堪える。そんな駿の考えにようやく気付いた忠義は、やり場のないもどかしさを全力で顔に出していた。
――この戦闘の映像記録は、ここで終わっている。森里駿と忠義・ウェルフリット。2020年現在における彼らの技量と人柄を、この映像から観測していた真凛は、蠱惑的な微笑を浮かべていた。
(……忠義・ウェルフリット、か。良くない噂が絶えないジャスティアライダーだけど、こういう子も居るのなら……あながち、そう悪いものでもないのかも知れないわね)
映像から垣間見える駿の人柄に優しげな笑みを溢している真凛は、挫けることなく成長しようとする忠義の人格についても、好感を持っているようだった。
そんな時、真凛のスマホから独特な着信音が鳴り響いて来る。その画面に表示された人物の名前に、彼女は眉を顰めていた。どうやら、あまり話したい相手ではないらしい。
(さて、と……そろそろ、「彼」に事の顛末を報告してあげようかしら)
それでも、無視するわけには行かないようだ。やがて彼女は、スマホの画面に指先を滑らせ――「ある男」との通話を始める。
「……私よ。この国に潜伏しているノバシェードの構成員達は、ギルエード山地の地下に怪人研究所を建設していた。確かに、あなたの情報通りだったようね」
『ふん、私の話を僅かでも疑っていたのか? つくづく癪に触る女狐だな、スチュワート』
通話先に居るのは――ギルエード山地に隠されていた怪人研究所の存在を突き止め、真凛にその情報を流していた張本人。
この男こそが。怪人研究所を潰した彼女を陰から動かしていた、真の黒幕だったのである。
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