陰謀編 穢れた正義と堕ちた英雄 第1話
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やっぱ吸っちゃおっかなぁ、もっと近くでスーハースーハーしちゃおっかなぁ!)
自分の美貌に自信を持っている彼女でも、ヘレンの凛々しい姿には惹かれずにはいられなかったのだろう。だが、当のヘレンはミルヴァの胸中など知る由もないまま、真剣な表情で辺りを見渡していた。
「……ミルヴェーデンさん、さっきから凄い汗ですよ。本当に大丈夫ですか?」
「は、はひっ!? だだ、大丈夫ですアーヴィング捜査官っ! だからもっとその匂いを……」
「匂い?」
「あ、あぁぁいやいやいや! 焼け跡の臭いが凄いな〜って! あはは、あはははは……!」
そんな彼女の凛々しい双眸で真っ直ぐに射抜かれたミルヴァは、一瞬で顔を元通りに切り替えていた。彼女はだらだらと滴る淫らな汗で全身を濡らしながら、頬を赤らめてぐるぐると目を泳がせている。脳内の内容がバレた瞬間に社会的な死が確定する以上、ミルヴァとしてはただ必死に隠すしかないのだ。
幸いなことに、彼女の爛れた欲望は辛うじて露見することなく、生中継は粛々と進められている。人気アナウンサーとしてのプロ意識がそうさせているのか、ミルヴァはあくまで現場の様子に緊張しているだけ……という体で、しとどに汗ばんだ美貌をテレビの視聴者達に披露していた。
◆
――そんな彼女達の様子を映した中継映像は、ノバシェードの脅威が身近に迫っている事実を全国民に訴えるには、十分過ぎるインパクトだった。首都・エンデバーランドの住民達をはじめとするこの某国の人々は皆、人ならざる怪物の存在を意識せざるを得なくなり、大いにどよめいている。
「お、おい、ギルエード山地ってここから結構近いじゃねぇか……! 大丈夫なのかよ……!?」
「ははっ、ビ、ビビり過ぎだろ。ノバシェードがそんな、そこら中にいるわけ……ないだろうが……!」
「だっ、だよなぁ……!?」
首都のバーで陽気に酒を飲んでいた若者達も、動揺した様子で顔を見合わせていた。こんな事態でさえなければ、ヘレンとミルヴァの美貌やスタイルに湧き立っているところなのだが、今回ばかりはそれどころではないらしい。
「おいっ! ノバシェードの内部抗争とはどういうことだ!? このオーファンズヘブンは大丈夫なんだろうな!?」
「わ、私共に仰られても……!」
現場から遠く離れた、ルネサンス様式の街並みが特徴の観光都市「オーファンズヘブン」。その市内に設けられていた、60階建ての超高級ホテルを利用している宿泊客達も、例外ではなかったようだ。
各部屋をはじめとする様々なフロアに設置されたテレビからこのニュースを知った上流階級の者達は、ホテルマン達に不安をぶつけ始めている。この国は本当に大丈夫なのか、と。
「……騒々しいわね」
――だが、その宿泊客達の中で
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