女王と野獣
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アが勝とうがどちらでも構わんのさ。シャクティをここに残せば、ザンスカールが勢いづいて、戦争が世界中で続くなら、そいつは俺にとってご機嫌なんだ。ふん…こんな小娘、どうとでもしろってんだ)
ヤザンはそんな言い訳じみた事を思っていたが、しかし人質をやらされているマリアは違う。
子供らの、真心籠もる会話を耳にし、そしてシャクティが心底安堵しているのを見て、この子達はシャクティの大切な人で、そしてきっとこの野卑な野蛮人もシャクティを守ってきた大人なのだと知れた。
(…特に、あのウッソという子。シャクティ…あなたにとって、とても大切な人というのはその子なのね。でも――)
――だがこの男は、娘と一緒にいるのに本当に相応しい男なのだろうか。
いきなり銃を突きつけられ、女性の尊厳を無視するような無礼な事を言われ、今も人質にされて、それでもマリア・ピァ・アーモニアという人は慈愛の人だった。それに、今こうして自分を人質にとっているのも、この子供達の為なのだろうとは予想できる。
だからヤザンに対する怒り等の負のイメージは小さなもので、大きな感情はただ娘の心配であった。
後はというと、怒り以上に小さな所に、ヤザンの横暴さを男らしさ≠ニ感じる心で、それはヤザンの人外の嗅覚が指摘した通りに、どこまでも己に染み付く雌の本能でもあった。
マリアは、若い頃からの苦労人だった。
今の時代では珍しくもないが、マリアとクロノクルも孤児であり、実の姉弟と分かっていて、二人手を携えて人身売買にも会わずに生きていけただけ運が良かった。
そんなだから、マリアは学業に励むこともできず、サイド1のアルバニアで、付け焼き刃の占い師をして何とか食っていたが、それでも困窮した時は、幸いにして美しかったマリアは時折、体を売っていた。
弟のクロノクルだけでも、せめて真っ当な人生を送らせてやりたくて、学費を工面する為に売春も増えてしまい、しかも売春相手と肌を重ねるうちに性愛に流されて、それを本当の男女の愛と信じて男に尽くしてしまう情の深い女でもあったから、ろくでもない男に引っかかっては捨てられてマリアは常に男に泣かされてきた。そんな金で大学などに行きたくないと、クロノクルは姉の心弟知らず≠ニ言わんばかりに反発し、ストリートギャングとつるんで薬物の売買にまで手を出す始末。
そんな生活を続けていれば妊娠するのは当然で、そしてその頃からマリアは不思議な力に目覚めたのだ。
それは、癒やしヒーリングの力。
占いも、今までの確率論と話術で行うものから一変し、本当に相手の心や少し先の未来を読んだかのように的中させた。
そのうちに、癒やしと占いを信奉する者が増えて、お布施のような物まで集まりだして
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