女王と野獣
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警告が聞こえたが、ヤザンと子供達は構わず走り去ろうとしたが、走るマルチナの脚を、倒れていた黒服が掴めば、マルチナは「きゃあ!?」と派手に転ばされる。
「マルチナさん!?」
ウォレンが駆け寄ろうとし、
「構わん、撃て!!」
倒れた子供に銃を構える警備隊。
そこに、今更ながら、女王マリアが悠長に扉を開けて、乱闘現場の迫力に鼻白いでいるのを見たヤザンが、落ちていた黒服の銃を引っ掴むと、転がるようにしてマリアへ寄ると、そのままマリアを羽交い締めにし、まさに獣のような怒声で吠えた。
「全員動くな!!!」
瞬間、皆の手が止まる。
プチモビや、乱闘騒ぎで見せた、彼自身楽しんでいると分かるような、どこか小ざっぱりとしたコミカルな剽軽さは完全に消え失せていた。
ヤザンは、殺気放つ凶相でマリアの頭に銃を突きつけ、そして捻り抑えたマリアの腕を更に捻ってやって、女の口から苦悶の喘ぎを漏らさせる。
「この女の顔に見覚えがあるだろう!警備共!!」
場の空気が一瞬で変わり、そしてヤザンに抑えつけられる女性の顔を見た警備隊は、やがてその顔色を蒼白にしていく。
「あ、あれは…まさか、女王陛下!?」
「そんな…なんで、こんな場所に、女王陛下が!」
「に、似ているだけじゃないのか…!?」
「いや、あ、あの顔…見間違えるはずがない!俺は恩寵の儀で、最前列で陛下の顔、見たことあるんだぜ!間違いなく陛下だよ!」
マリアを捕らえたままに、じりじりと後退していくヤザンは、その足で子供達に合流して、そして皆でゆっくりと退がっていく。
ウォレンも、マルチナに肩を貸しながらすぐさま退くが、シャクティは思わずヤザンへと震えた声で言った。
「あ、あの…ヤザンさん、その人は――」
「分かっている…お前の母親だってンだろ。殺しはせん。だが…おい、マリア…娘のためだ。少々我慢してもらうぜ」
「は、放しなさい…!女王と知ってて、こんな狼藉をするなんて…!」
「あいにく女王陛下に対する礼儀なんて、スクールで教えて貰ったことはないものでな。それに、女王だなんだと言ってるが、俺にとっちゃただの女と変わらん…くくく、雌の匂いが濃いぜ、お前さん」
「なっ!?」
マリアの頬に朱が差して、妙な気恥ずかしさが込み上げてそれきり口を噤む。
その間も、ヤザン一行は少しずつ警備隊との距離を空けていく。
「よォし…いい子だ。貴様ら銃を下ろして隅に投げるんだ…次は床に腹ばいになれ!さっさとせんと、女王陛下
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