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ヤザン・リガミリティア
女王と野獣
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ュが互いのポケットを確認したりを繰り返し、しきりに無い無いとジェスチャーをしているのは、これは明らかな時間稼ぎだ。

 

「あれぇ〜!?さっきはあったのに!ねぇあんたも見ましたよね!?入国許可証!」

 

「何をしている…!早くしなさい!本当にしょっぴくぞ!」

 

「えぇい、もういい!全員逮捕し、姫様を確保しろ!」

 

待ちかねた黒服が、とうとうウッソ達へ実力行使を試みようとした瞬間、

 

「ち…!シャクティがこうも向こう見ずに動くとはな!忘れてたぜ…意外と強情で突拍子もない奴ってことを!だが、まぁこいつをかっぱらってくる時間はあったからな!」

 

路地裏からヤザンが舞い戻った。

が、己の身一つではない。がっしゃがっしゃとけたたましい足音を響かせて、作業用ウォーカーマシン・通称プチモビ≠ノ跨ってやってきたのだ。しかも口にはチキンなど咥えて。

 

「あはははっ!父ちゃん、どこからかっぱらって来たんだァ!?」

 

ふざけて演技を続行しつつ、オデロが驚きつつ笑って、仮初めの父を歓迎する。

 

「プチモビだ!こ、こいつら、抵抗しようというのか!」

 

「やはりただの偶然ではない…!拘束しろ!!」

 

「う、うわーーー!?」

 

黒服は咄嗟に銃を抜いたが、プチモビが手に持つパイプにぶん殴られて、その銃弾は明後日の方向に飛んでいく。銃撃音だけが裏路地に響いた。

 

「く、くそ…所詮ただの作業用だ!落ち着いて対処し――どっわぁぁ〜!!?」

 

「くはははは!プチモビ風情でも、使い方次第では人だって殺せるんだ!どけどけェ!」

 

鈍重な民間作業用とは思えぬ、素早くも精密な動き。

黒服をいっぺんに三人も持ち上げて、路地裏の寂れた商店にぶん投げれば、いかつい男達は薄汚れたショッピングのガラス壁に盛大に突っ込んでいく。

咥えていたチキンをとうとう食い終えながらのながら運転≠ナ黒服達をちぎっては投げちぎっては投げの、圧倒的な強さを見せつけていた。

 

「まずいな…マクダニエルのバーガーの方がマシだったぜ」

 

グルメ評までしつつ、プチモビのミニバーニアで背後の黒服の尻を焼き払って、「あちゃちゃちゃっ!!」と狼狽える黒服を消火栓へと蹴り飛ばす。

 

「すっげー!やっぱあの人、何乗っても強ぇな〜〜!」

 

「プチモビって、あそこまで戦えるんだ…!」

 

「やっちゃえ、おっちゃーーん!」

 

オデロ達も思わず拍手喝采したくなる程の強さだ。

ヤザンが乗ると、ただの工事現場のプチモビ程度でもあれ程心強く思える。


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