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ヤザン・リガミリティア
女王と野獣
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名。

ヤザンの鋭い目と視線がかち合っても、黒服の方が目線をそらすのは、子供に怒鳴り散らすようなゴロツキな中年男性との無用なトラブルを避けたいからだろう。

 

ビンゴだ。

 

そう思い、安アパートの前を通り過ぎていく、その最後。視線の端に車が映った。

やたら高そうな黒塗りの高級車両で、リムジン型のエレカ。

こんな下町の裏通りにあるのがおかしいくらいの代物で、ヤザンの思考に一つの予感が走った。

 

「アメリアの下町に…こいつは厄介なタイミングかもしれん。……女王がここに来ているかもしれんぞ……俺は裏に回ってみる。お前らはここで玄関を見張れ」

 

ヤザンが、ウッソに聞こえる程度の小声で言うと、ウッソの目が僅かに見開かれる。

もしも女王マリアが丁度面会に来ているとすれば、このタイミングでのシャクティ奪還は少々困難だろう。

 

「おい、おめーら!」

 

ヤザンが、黒服達に見せびらかすようにして子供達に怒鳴った。

 

「父ちゃんはな!ちぃっとばかし酒買ってくるからよォ!ここで待ってろ!いいかぁ!悪い大人に気ィつけて待ってろよ!ふらふらとどっか行くんじゃねぇぞ!てめぇらは大事な働き手なんだからよ!」

 

「悪い大人ってのはオヤジだろ!また酒かよ!クソ親父!俺のことなんて金稼ぐ道具程度にしか見てねぇんだろう、どうせ!オマケに、下の子の世話全部押し付けやがってさ!」

 

「ガキは黙って親の言う事聞いてろってんだ!クソ息子!」

 

オデロとのやり取りも大分スムーズで、そして迫真の喧嘩だろう。

チラリと見てきていた黒服達も、まるで溜息でもつきそうなしかめっ面で、飲んだくれのダメ親父ことヤザンを一瞬見た。

ヤザンは、演技もあるだろうが未だに骨折の治りきらない片足で不自由さを存分に発揮し、ふらふらと千鳥足で歩く。そして残された子供達は、安アパート前の玄関前の階段に座り込み、あるいは細い道で犬のフランダースやハロと堂々と戯れだすのだった。

それを黒服達は、ただ当たり前の光景として受け取っているようだったが、そのうちの一人が

 

「あ〜…君達。身分確認させてくれ…市民IDの提出を頼む。…………サイド1からのジャンク屋、ね。うん…入国許可証を確認した。……居てもいいが、スマンが、そこに座り込むのはやめてくれないか。となりの階段にしてくれ………大変だな」

 

事情は全部見ていたので、そうやってやんわりと移動させた。

だが、そこで終わりだった。

それ以上は見咎める事もなく、安アパート近くで戯れる子供達を目溢した。

 

(シャクティ…君を近くに感じるよ…。でも、ここには君のお母さんがいるん
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