女王と野獣
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る。
一度目の空襲とは違い、本格的な攻めを感じさせる爆発音までが響いた。
「来たか…!全員、走れ!!!」
ヤザンが叫ぶと同時に、蜘蛛の子を散らすようにしてウッソ達が駆け出す。
女王を誤って射撃したという衝撃に加わって、コロニーに響く爆発音まで轟いては、警備隊達も少々のパニックは妥当な所だが、彼らが口々に状況の確認を求めたりするうちに、慌てながらも再度銃を構えた警備兵に、犬のフランダースが一気呵成に飛びかかって牙を立て、そしてハロが立体映像のヴィクトリーやガンイージをそこらの宙空に投射。
パニックは一気に加速し、兵達はMSの映像に射撃をしたりと大慌てだ。
肩を少々撃たられたらしいヤザンだが、撃たれたダメージなど感じさせぬ生命力を見せつけたヤザンは悪辣に笑ってみせ、
「ボールハロに犬っころフランダースめ、いい仕事しやがるぜ」
直ぐ様立ち上がって、マリアなどほっぽっといて駆け出そうとする。
が、そこでマリアが、己でも良くは分からぬ内に反射的に手を伸ばし、彼の裾を掴んだ。
一瞬、忌々しげにマリアを睨んだヤザンだが、その目を見てなぜ自分を止めたか≠理解して、再びほくそ笑んだ。
「この傷はお前の国の兵士がやったのだから、貴様のせいだなマリア。こいつは駄賃に貰っておくぞ」
「…っ」
女の瞳に情欲の火が仄かに揺らめくのを見抜いて、別れ際に唇を奪ってから走り出す。
(私は……私は、こうも女であるの?……シャクティ)
マリアは、己が娘よりも男へと先に手を伸ばしたのが、自分でショックだった。信じられなかった。
自分の中の浅ましい女が、こうも強く残っていた事に驚き、動揺し、去りゆく娘を止める資格が自分には無いと錯覚してしまった。
走り去っていくシャクティとヤザンを、母と女とを揺れ動く眼差しで見送るしかなく、シャクティは一度だけマリアを振り返ったが、ウッソの手をしっかり握ると、それきりもう振り返らなかった。
す。
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