暁 〜小説投稿サイト〜
ヤザン・リガミリティア
女王と野獣
[14/14]

[8]前話 [9] 最初
る。

一度目の空襲とは違い、本格的な攻めを感じさせる爆発音までが響いた。

 

「来たか…!全員、走れ!!!」

 

ヤザンが叫ぶと同時に、蜘蛛の子を散らすようにしてウッソ達が駆け出す。

女王を誤って射撃したという衝撃に加わって、コロニーに響く爆発音まで轟いては、警備隊達も少々のパニックは妥当な所だが、彼らが口々に状況の確認を求めたりするうちに、慌てながらも再度銃を構えた警備兵に、犬のフランダースが一気呵成に飛びかかって牙を立て、そしてハロが立体映像のヴィクトリーやガンイージをそこらの宙空に投射。

パニックは一気に加速し、兵達はMSの映像に射撃をしたりと大慌てだ。

肩を少々撃たられたらしいヤザンだが、撃たれたダメージなど感じさせぬ生命力を見せつけたヤザンは悪辣に笑ってみせ、

 

「ボールハロに犬っころフランダースめ、いい仕事しやがるぜ」

 

直ぐ様立ち上がって、マリアなどほっぽっといて駆け出そうとする。

が、そこでマリアが、己でも良くは分からぬ内に反射的に手を伸ばし、彼の裾を掴んだ。

一瞬、忌々しげにマリアを睨んだヤザンだが、その目を見てなぜ自分を止めたか≠理解して、再びほくそ笑んだ。

 

「この傷はお前の国の兵士がやったのだから、貴様のせいだなマリア。こいつは駄賃に貰っておくぞ」

 

「…っ」

 

女の瞳に情欲の火が仄かに揺らめくのを見抜いて、別れ際に唇を奪ってから走り出す。

 

(私は……私は、こうも女であるの?……シャクティ)

 

マリアは、己が娘よりも男へと先に手を伸ばしたのが、自分でショックだった。信じられなかった。

自分の中の浅ましい女が、こうも強く残っていた事に驚き、動揺し、去りゆく娘を止める資格が自分には無いと錯覚してしまった。

走り去っていくシャクティとヤザンを、母と女とを揺れ動く眼差しで見送るしかなく、シャクティは一度だけマリアを振り返ったが、ウッソの手をしっかり握ると、それきりもう振り返らなかった。

 

す。
[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ