女王と野獣
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求めていない奴も一定数存在しているのさ。この俺のようにな」
「それは貴方が愛を知らぬからです」
「ほぉ?なら貴様が教えてくれるとでも言うのか?」
「もちろんです。私の言葉に耳を傾けていただければ――」
「そういう時は相手の流儀に合わせるものだぜ。俺は言葉など信じん。体で示して貰おうか」
「っ!」
わざと耳元に密着するかのよう囁き、そしてマリアの脇腹から指を這い上がらせ、乳房の輪郭をなぞって頂きへと指先を滑らせていく。
それだけでマリアの背がしなって、言葉を止められた。
「クックックッ…どうしたマリア?女王様ともあろう女が、たったこれだけの愛で腰砕けか?」
「は、破廉恥な…!こんなのは、あ、愛ではありません…!」
「こういう愛もあるって事だろう」
娼婦として性に熟れておきながら、シャクティを生んで以来、そういう事とはとんとご無沙汰だったマリアであったが、忘れ去りたかったイ・ヤ・な熱が女の器官に生まれたのを本能で分かる。
「ちょ、ちょっとヤザンさん!?」
ようやく実母かもしれないと理解できてきたシャクティが、母を口説くような行為を咎めるように慌てて、そしてウッソやオデロなどは(また女をからかう悪い癖だ)と表情をコミカルに歪ませた。
ヤザンは、カテジナの時もそうだったが、性格の激しさ云々よりも、融通の利かない生真面目な人間程からかいたがる性質たちがあるのは、既にリガ・ミリティアの人間なら誰もが知る。
「ヤザンさん…そんな事してると、いつかカテジナさんに刺されますからね」
ウッソが言ったが、この少年が言うと妙な説得力と迫力があるのは不思議だ。
「ヤザン隊長〜、今そういう冗談はちょっとヤバいですって!見てくださいよ連中のあの顔!捕まったら絶対殺される…!」
オデロまで口を抑えて顔を真っ青にする程、ヤザン達の動きに合わせて一緒に動く遠巻き連中の怒りが伝わってくる。
だがヤザンは、こういう場面でも強気は崩さない。
「ハッ!ビビるな!戦場ではビビったやつから死ぬぞ!」
「ここは戦場…なのかなぁ?」
スージィがどこか呑気な疑問を呈する。
なんだかんだと子供達もある程度の余裕があるのは、やはりヤザン・ゲーブルという男が味方としてこの場にいるからなのだろう。
殺気渦巻く怒りの現場だが、マリアには相変わらず銃が密着していて、場は膠着状態を続けた。
(ちぃ…まだか!?いい加減時間稼ぎも限界だぞ…!!伯爵め、何かトラブったってのか!?)
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