女王と野獣
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、裕福とまではいかなかったが、赤ん坊のシャクティと、汚い世界から足を洗い仕事を手伝うようになってくれたクロノクルとで、慎ましくも暖かな三人家族だった。
思えばその頃が一番幸せだったのかもしれないが、全てはフォンセ・カガチと出会った事で変わってしまった。
マリアの噂を聞きつけたカガチは、その力と慈愛のカリスマを、己の政党の躍進の足がかりとした。
シャクティを手放したのも、カガチの魔手から逃すためだし、優しくも弱い心を持っていてとても戦う人ではなかった弟のクロノクルが、軍人などを志したのも、老獪なカガチに対抗する力を蓄えるためであるし、マリア一家は裕福になるのと引き換えに、暖かでささやかな幸せというものを失っていた。
それでも、マリアが女王としてギロチンのガチ党と組んでいるのは、カガチの政治力があれば己の癒やしを世界に広げて、騒乱続きの地球圏を平和に出来ると信じているからだ。自分のような肌を売って泣く貧乏で不幸な者がいなくなる世の中にできると信じているからだ。
愛と慈悲が世界を救う≠ニ本気で信じているのがマリアであり、人は善性の生き物であるとも確信する慈愛の女王でありながら、娼婦としての経験により雌としてこれ以上ない程に熟れながら男運に恵まれない女…それがマリア・ピァ・アーモニアだった。
「私に銃を突きつける貴方」
マリアが毅然として背後の男、ヤザンへ言う。
「貴方は…こうまで闘争の炎を漲らせて何を望むのです。こんなやり方では、子供達を守れはしません。むしろ危険に晒してしまう。怒りと戦いの心は、憎しみを呼び寄せて血を流させる…こんな事はおやめなさい」
「なんだァ?貴様…状況が分かっているのか?この俺に、ここで説教垂れようってンなら、一昨日来いってなとこだぜ」
「頑なにならず、受け入れる心を持つことです。そうしなければ、他者と心を通わせ理解し合う事などできません」
「くくくくっ、理解し合うだと?クハハハハハッ!こいつはいい!おめでたい脳みそしてやがるな、アンタ。なるほど納得だ…こんなイカれた教団の女王に祭り上げられてる哀れな女だと思っていたが、貴様自身、祭り上げられるだけの理由があったようだな…!」
片目を引き攣らせて、銃をわざとマリアへ押し付けるヤザンに、ウッソとシャクティやオデロ達も、思わず言葉を失ってハラハラと見守っていたが、それは周囲の警備隊も近衛の黒服達も同じだった。
ウッソ達でさえ、凶悪な犯罪者が、可憐な女王を凶弾で弑しようとしているとしか見えないのだから、ザンスカール兵達から見れば、もはや一刻の猶予もない切迫した状況というわけだ。
「教えといてやるよ、マリア。世の中にはな、愛だの何だのを
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