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ヤザン・リガミリティア
女王と野獣
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空襲は一瞬で、襲ってきたのはやはりリガ・ミリティアだったがあっという間に首都防衛隊に蹴散らされた……放送でそう喧伝している。

そういう事だから、あの空襲警報から少し経った今では警報は解除されて、一般市民達は平穏を脅かすリガ・ミリティアへの悪態をつきつつ街を闊歩していた。

そんな民衆の中に、ジャンク屋一家も混じっている。

 

「伯爵達はいいタイミングだったな」

 

殴られ跡の治療をスージィから受けつつ、ヤザンはウッソ達と笑い合う。

オデロはエリシャから頬の治療をされていたが、腫れ具合は明らかにオデロの方がでかい。

 

「いちちっ、いたッ、ちょっとエリシャもうちょい優しくやってくれって!」

 

「男でしょ!我慢しなさいよ!」

 

「隊長も、もうちょい手加減してくれていいでしょ!まったくあんな殴らなくたってさ!」

 

ニヤッとヤザンは口の端を持ち上げた。

 

「お前だって俺を殴れてスッキリしただろうが。それに、あんだけよくも好き勝手言ってくれたなァ?」

 

「え、えぇ!?あれは…え、演技に決まってるでしょ!」

 

あの騒動の中で、オデロは「じこちゅー男」とか「短気野郎」とか「悪人面」とか言いつつ、父・ゲゼとの喧嘩を演・じ・て・いたわけだが、半分以上は普段言えなかった言いたいことをぶち撒けたのではないか…という疑惑が一瞬で仲間内で持ち上がっていた。

指摘されてオデロも引きつって笑って誤魔化す。

暫し睨んでいたヤザンだが、彼もすぐに再び笑って、オデロの額を小突きながら口を開く。

 

「まぁいい演技はしてたぜ。生意気なガキを演らせりャ、お前の右に出る奴はおらんな!」

 

「でしょう!」

 

鼻っ柱を自慢気に掻きつつ、胸を張るオデロ。

そんなオデロを、どこか羨ましそうに眺めるのは他の少年達で、ウッソもその一人だった。

ウッソは、オデロ達と違って親を失ってはいないが、関係が希薄だったという点では彼らよりも愛情に飢えているし、大人からの承認欲求も内心ではある。殆どの大人が尊敬できないから、心底では実は大人を見下している面もあるのだが、尊敬し、敬愛できる大人ならばウッソは寧ろ甘えん坊≠ネ一面が出てくる時がある。

そんなウッソにとって、ヤザンは言うまでもなく、両親を除いて最も甘えたい大人だった。

ヤザンに認められ、共に戦場を駆けるヤザン隊の名誉まで貰っているのは、ウッソにとって大きな心理的アドバンテージだ。

 

「それにしても、援護ってのは空襲あれの事だったんですね」

 

だから、こうやってヤザンの気をこちらに向けてくるのも、少年の可愛らしい悋気なのか
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