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ヤザン・リガミリティア
害獣侵入
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ガチャリと音を立てた。

 

「え…マ、マリアおばさん…!?あ、あなたが…お母さん…!?」

 

部屋に入ってきた妙齢の女性を見て、シャクティは呟いた。

母親と会わせてあげる、と言われたが、現れたのはカサレリアの家に飾ってある写真に写るマリアおばさん≠セ。赤ん坊の頃の自分を抱いて微笑む、優しそうな叔母。少なくとも、ウッソの両親からはそう聞かされていた。

 

「私の、私の本当のお母さんは、カサレリアのお母さんです…!ヤナギランを一緒に育てていた、お母さんです!クロノクルだって、私の叔父さんだなんて、そんなの嘘っ!あなたは…、あなたは…!」

 

違う違うと頭を振ってしまうシャクティは、些か平常心を失っていたせいもあって意固地だった。

それというのも、彼女の優れた感性が、パートナーの少年の気配が少しずつ近くに来ている事を感じ取っていたせいでもあるが、眼前の女性からとても暖かなモノが流れてきて、少女の心は一層逆立った。

 

(嘘よ…こんなの、全部おかしい!ウッソ…助けて!私…頭がおかしくなりそうよ…!ウッソ…ウッソが近くに来てくれている…!ウッソの側にいきたい!)

 

戦争という狂気に巻き込まれ、嘘で塗り固めてこようとする悪い大人に囲まれて、しかもここには見知った人は誰もいなくて、そしてシャクティはまだ11歳の田舎育ちの素朴な少女だった。混乱もしようというものだ。

シャクティにとって確固たる真実は、人生という時をずっとウッソと共にカサレリアで過ごしてきたという事だけ。それだけは決して揺るがない彼女のアイデンティティであった。

だから、その気配を嗅ぎ取ったのなら、それはシャクティの確実な安心が側に来ているという事で、何よりも優先すべき事だ。

 

「あぁ、シャクティ…!そうよ…私はマリア。でも、あなたの叔母ではない……。もう、近衛の者から聞いたのでしょう?許してとは、言わないわ。でも…あの時の私は、あなたを守るために、あなたを手放すしかなかった。でも今なら…今の私の立場なら、あなたを守ってあげられる。せめて、あなたぐらいは」

 

マリアが一言一言を発する度に、シャクティの心に暖かな波動が染み入るのが実感できてしまう。しかしその暖かさが、カサレリアの母との思い出を凌辱していくようだった。

 

「いや…!」

 

マリアが差し伸べた手を払って、シャクティは駆け出す。しかし、扉の前には黒服が陣取るし、そして背後からもう一度、暖かで、そして必死な呼び声が聞こえてシャクティの脚は止まる。

 

「まって…!お願い、待ってシャクティ!あなたは、その小さな身体で戦場にいたのでしょう?ずっと独りで…。網膜、声紋、DNA…データは全て見まし
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