害獣侵入
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なっちまってよォ…!」
全くそれどころじゃなかろう、と入国審査官も兵士達も思うが、とにかく凄まじい剣幕で、目はまさに殺人者のそれであり、入管の誰もが後ずさる。
空襲警報というトラブルも起きたし、さっさとこんな奴との関わり合いを断ちたい。そう思うのが人情というものだろう。
「あぁもう!分かったから落ち着きなさい!取りあえず入国許可証だけは出してやる!だから今はあなた達もさっさと避難しなさい!」
ミミズがのたくったような雑な文字だが、確かに現場責任者のサインが刻まれた許可証が、投げつけられるようにしてヤザンの胸に押し付けられる。
心の奥で、ヤザン達はほくそ笑んで、バジャック一家は奥へ促されるままにさっさと他の市民達とシェルターへ誘導されていく。
数度、振動と轟音が港に響いた。
「わぁ!」
「きゃああ!!」
「だ、大丈夫なんだろうね、君ぃ!」
市民が慌てる度に、兵士達が皆をなだめて、必死に誘導する。
そんな中で、小規模なジャンク屋ファミリーにいつまでも注意を払い続けるのは難しい。
人混みに飲まれて、いつの間にか群衆の中に消えていったジャンク屋達は、既に兵達の預かり知らぬものとなっていた。
◇
シャクティは、小綺麗な若葉色のワンピースに身を包み椅子に座っていた。
母親と会わせるからここで待つように言われ、いかめしい顔の黒服の男と結構な時間、部屋閉じ込められていたが、自分の扱いはどこまでも丁寧だ。
ここに連れてこられるまでの間、少女は様々なことを聞かされた。
自分がザンスカールの女王マリアの娘であること。
自分を姉さんと呼び慕ってくる、哀れな戦争被害者であった敵パイロットのクロノクルが、己の叔父であること。
カサレリアには、危うい勢力拡大活動反連邦運動に娘を巻き込まぬ為と、恐らく備えているであろうシャクティの異能を、カガチ恐ろしい人に利用されぬ為という、苦渋の決断で行かせていたこと。
カサレリアの母と父は、ザンスカールが雇ったエージェントであったこと。
戦争の混乱で、エージェント達との連絡が断たれ、娘を失ってしまったこと。
すべてが衝撃的であったが、聡明で、敏い感覚も持つシャクティには、実のところ心の片隅で思い当たってしまう事が多々あった。
奥底に抱いていた違和感とズレが、聞かされた話でピタリと噛み合ってしまう感覚があって、それがまた少女の心を追い詰める。今までの思い出は虚飾だったのか、と。
思考がぐるぐると渦巻いていた時に、扉が
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