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八条学園騒動記
第七百四話 休まず動く国その三

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「聞いていて実際にだ」
「そうですね」
「回遊魚の様にだ」
 連合市民はというのだ。
「絶えずな」
「動くなぞ」
「もっとも回遊魚は寝ることなく動くからな」
「そこは違いますね」
「そうだが」
 それでもと言うのだった。
「寝ている時以外に動くのはだ」
「実に余裕がないですね」
「何でもそれがだ」
 寝ている時以外は常に動くことがというのだ。
「連合ではだ」
「美徳ですね」
「何かしていることがな」
「怠惰は最大の悪徳だとか」
「そう言われている」
 事実連合ではそう言われている。
「それでだ」
「常にですね」
「動いている」
「こうしたこともせず」
「コーヒーの一杯位だ」
 言いつつ飲むのだった。
「落ち着かなくてはな」
「なりませんね」
「見るのだ」
 大尉は上等兵に眉を顰めさせて話した。
「周りを」
「周りの学生達をですね」
「その飲み方をな」
「ホットでもですね」
 上等兵は大尉に言われるまま周りの自分達以外の客達を見回して話した、見れば誰もが本を読んだり参考書や教科書を開いたりだ。
 お喋りやスマートフォンに興じていてだ、飲み方はというと。
「せわしなくです」
「早送りの様に飲んでいるな」
「甘いものを共に口にしていても」
「その動きもな」
「速いですね」
「実にだ」
 まさにというのだ。
「せわしない」
「余裕がないですね」
「歩くことについてもな」
 これもというのだ。
「君なら気付いていたな」
「速いですね」
「小走りの様にだ」
 エウロパから見ればというのだ。
「そうだな」
「左様ですね」
「それで飲んで食べるのもな」
「速く」
「食後の一杯すらだ」
「速いですね」
「そしてすぐにな」
 それこそというのだ。
「飲んで食べてだ」
「次の行動に移りますね」
「食後の休憩という発想自体がな」
 そもそもというのだ。
「連合にはない」
「口直し程度ですね」
「全く以て余裕がない」
「まさに寝ている間以外は動く」
「そうした国だ、ローマ貴族の様な優雅さはだ」 
 これはというのだ。
「全く以てな」
「存在しませんね」
「それも四兆の人間がだ」
 それだけの数の者達がというのだ。
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