第二章
[8]前話
会社で働いていった、それでだった。
兄はその彼女にだ、家の中で言った。
「普段は昼行燈でもな」
「それでもっていうのね」
「お前顔が広いからな」
「役に立ってるでしょ」
「ああ、知り合いは友達が多くて助かってるよ」
詩織にというのだ。
「本当にな」
「そうでしょ、これでも人付き合いはよくてね」
「友達や知り合いも多いな」
「お仕事って人間関係も大事でしょ」
詩織は真面目な顔で話した。
「だからね」
「お前はそれを使って働くんだな」
「会社の為にね」
「それならそれもあるか、しかしな」
兄は妹の言葉に一旦は納得してからこう返した。
「それでもお前はな」
「昼行燈っていうのね」
「ああ、どうにかならないか」
「ちゃんと働いてるからいいでしょ」
「普段からそうしろ」
真面目な兄はこう言った、だが詩織がその人脈を使って仕事をしてくれるのは感謝した。そして彼女の友人や知り合いに彼女のことを聞くと。
「明るくてユーモアがあって」
「それで愛嬌があって」
「どうにも憎めなくて」
「いい加減で怠け者でも」
「やることはちゃんとやってくれるし」
「人懐っこいですから」
「人に好かれる性格か。そうした性格だと」
兄は彼等の輪を聞いてあらためて思った。
「それはそれで有り難いな」
「私は顔も性格もいいってことね」
「そこで調子に乗るな」
笑って言う妹に釘を刺す様に返した。
「けれどそこもか」
「憎めないのかしらね」
「そうだろうな」
こう返しつつそれならそれでいいと思った、そして彼女が社内でもホープの社員と結婚した時は人の目もあると思った、それで何だ神田で彼女にはいざという時に働いてもらった、それは彼が両親の跡を継いで社長になってからもだった。
社長の娘の仕事 完
2023・6・18
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