暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第157話:閉じた世界を抜けて
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だけど――――」




「大きなお世話だ」

 突然、響の後ろの席から聞き慣れた声が響いた。驚きのあまり飛び跳ねるように背後を振り返れば、そこには席の境目でもある背凭れの上からこちらを見ているクリスの姿があった。

「うええッ!?」

 確かにこのファミレスは本部が停泊している港からほど近い。だからこそ2人もこの場所を選んだのだし、そうであればこうしてかち合う事もそう珍しい事では無いのかもしれない。だがそれとこれとは話が別。まさか悩みの種である人物に話を聞かれる事になるとは思ってもみなかったのだ。

 突き返すようなクリスの言葉に、彼女の対面に座る奏と翼は窘めるように話した。

「その言い草は無いだろう、雪音。2人はお前を案じているんだ」
「そうそう。それにクリスだって、何時までも透と疎遠になりたくはないだろ?」
「ええッ!? 奏さんと翼さんも居るッ!?」
「よっ! 奇遇だな?」

 世界的アーティスト2人がファミレスに居る光景と言うのも滅多に見れない姿だ。場所が場所で時間が時間だからか他の客の姿は殆ど見当たらないが、下手をすると彼女達のファンが殺到してもおかしくない状況である。
 まぁそこは2人も理解しているだろうから、そうならないように何かしらの対策は考えているのだろうが。

「私達だけでなく、皆、雪音と北上の事を心配している」
「分かってるッ! けどほっといてくれ。あたしなら大丈夫だ」
「そんな顔で言われても信じられない事位、言われなくても分かるだろ?」

 奏の指摘の通り、今のクリスは酷いとまではいかないが心配になる顔だった。眉間には常に皺が寄っているし、表情からは険しさが抜けていない。例え初対面の人が見ても、今のクリスは大丈夫では無いのが丸分かりだ。
 普段であれば彼女の隣には透が居て、彼が彼女の心を宥めてくれるのだが…………

「…………うるせえよ」

 と、こんな具合にクリスは心の痛みを無理矢理抑え込むような顔でそれ以上何も言わない。今まで透の存在が清涼剤となって宥めてくれていた分、彼が居ないとこんな時どうすればいいのか分からないのだ。それはクリス自身も自覚している。しかし、今は彼とも顔を合わそうと言う気になれなかった。

 未だにクリスには分からなかった。何故透は自分の喉を切り裂き、声と夢を奪った相手を許しておけるのか。自分を引っ叩いてでも仇と言える相手を助けようと思えるのかが、クリスにはどうしても理解できなかったのである。今までは世界で誰よりも信頼で来ていた筈の少年が、初めて遭遇する未知の相手の様に思えて恐怖すら感じていた。そして愛しい筈の透にそんな気持ちを抱いてしまった自分がショックで、クリスは透と顔を合わせる事が出来なかった。

 消え入りそうな声で拒絶の言葉を口
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