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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
自由惑星同盟の最も長い3カ月
796年5月の最高評議会安全保障小委員会緊急会合
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が望むのであれば、議長としても後押しをする。次の政権がどうであれ君は制服軍人の最高位であり続けるだろう」

「感謝いたします我らが議長」
 人事案の提出時期などについて言葉を交わすとシトレは意気揚々と政治家たちを残し、2年間座る椅子のもとへ戻っていった。

「君もあと4年、国防委員長の座が欲しいのかな?かけがえのないパートナーは2年は椅子を守るつもりらしいが」
 老議長の声の中に潜む諧謔を読み取ったのか、トリューニヒトは笑った。
「党員たちの望み次第ですな、それは」

「それは実に民主的でよろしいことだ」
 国民共和党の党員は10億人近くいる――構成邦政党の党員が兼務しているものが9割であるが。なるほど民主的といえばそうなのかもしれない。

「えぇその通りですな。それに加えて‥‥」

「情報交通委員長の問題もある。カナマル君はもう無理だ」
 ルンビーニ星域における事故は重要な宇宙港周辺に液体金属をぶちまける最悪の事故となってしまった。何が最悪化というと死傷者もそうだが港湾が麻痺したことが一番まずい、特に安全管理の書類と実態の食い違いを本来確認するはずだった検査の省略に対し、委員長の介入があったことは既にサンフォードは把握している。
 率直に言ってカナマル情報交通委員長の生命を失わせたのは“ルンビーニ”の同盟弁務官の一人がウォルター・アイランズであり国防委員長の座を数年後に目指すトリューニヒトの側近として下院への転向をすでに決めていたことだ。
 連立政党のみならずトリューニヒトが重鎮であるNRP中央派のメンツを叩き潰す形で腐敗があらわになった以上、カナマルの政治生命は終わったも同然だ。

「人選は党内に任せますか?」

「どのみち大して長くはない。見栄えのいい若手を抜擢したほうが良いだろう。それについては全国委員会にも相談している」
 サンフォードの議長の任期は半年程度、既に予備選挙が間もなく始まる。
「状況次第では半年で大きな仕事の基礎をやらされますね。自由党はともかく労農党は欲しがるかもしれません」

「レベロやホアンもそうだが、それ以上に上院の動向が気にかかる」
 トリューニヒトもわずかに緊張した顔でうなずいた。

「すべての選択肢が私の前にある。おそらくこの30年で私以外の誰がこれほど自由な選択肢を得たのだろうか。そしてその選択を楽しむ猶予は刻一刻と減っていく」
 サンフォードはため息をついた。

「いずれにせよ、総裁閣下、とにもかくにもおめでとうございます」
 トリューニヒトは議長ではなく総裁とサンフォードを呼んだ。
 年若い国防委員長が見るサンフォードの背中は少し丸まっていた。
だがそれは嵐をしのぎ議長の座に(連立のための妥協の産物とはいえ)手をかけた姿だ。

「祝う前に選挙だ
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