第百三話 夏休みの宿題その四
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「そんな筈がないでしょ」
「そうでしょ、断ればね」
「それでいいわよね」
「好みじゃなかったら」
咲も眉を顰めさせて答えた。
「もうね。私告白されたことないけれど」
「私もないけれど」
「それでもそんなことしないわよね」
「あの、あれ犯罪じゃない」
同級生は真顔で言った。
「完璧にね」
「殺人罪よね」
「それも殺し方がね」
「無茶苦茶よね」
「太宰もあれは敵討ちじゃないって言う位だし」
太宰は敵討ちは堂々とするものと言っている、兎のあの殺し方から彼はかちかち山をあの様に書いたのだ。
「それをそのままするって」
「残虐よね」
「地獄の漫画でもね」
同級生は漫画の話も入れた。
「あの兎いっちゃってるけれど」
「目が赤くなってね」
咲もその漫画の話をした。
「それでね」
「物凄いこと言うけれど」
「講堂も物凄いしね」
「あの漫画でも酷いし」
それにというのだ。
「それで太宰の作品だと」
「完全に殺人でね」
「殺狸?」
同級生は殺されたのが狸なのでこう言った。
「あれは」
「あっ、そうね」
咲も言われて頷いた。
「狸だから」
「殺人じゃないわよね」
「殺狸で」
「まあそれでも犯罪よね」
「立派なね」
「殺してるし」
「ええ、それでその殺し方が」
それがというのだ。
「サイコパスかっていうね」
「惨い殺し方で」
「そう言うのだから」
「いや、狸の何が悪いってね」
「余計に思うわよね」
「あそこまで酷い殺し方をして」
同級生は眉を顰めさせて言った。
「汗かいちゃったでね」
「終わりだから」
「いや、ないわ」
咲に心底引いた顔で言った。
「読んで本当に思ったわ」
「酷過ぎるでしょ」
「だから読み終わって感想文一気に書けたわ」
「あっ、宿題終わったの」
「ええ、もう兎の酷さをね」
読んで思ったそれをというのだ。
「思いきり書いたわ」
「そうなのね」
「いや、惚れたが悪いかって言葉がね」
狸の最後のこの言葉がというのだ。
「忘れられないわ」
「何が悪いのか」
「そう思うから」
だからだというのだ。
「私も心底思ったわ」
「それで一気に書けたのね」
「御免なさいで断ればいいのに」
それがというのだ。
「延々と嬲り殺しにするとか」
「最悪よね」
「純真っていうけれど」
太宰のかちかち山の兎はというのだ。
「邪悪でしょ」
「だから無垢な女の子の残酷さをね」
「書いた作品なのね」
「それがあのかちかち山よ」
「そうなのね」
「だからああなのよ」
「そういうことね」
咲の言葉に眉を顰めさせて応えた。
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