第百三話 夏休みの宿題その二
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「本当にね」
「短い作品でもいいの」
「それこそ半日で読めるものでもね」
「短編でもいいの」
「よく読書感想文に太宰治の作品選ぶ人いるけれど」
この作家のそれをというのだ。
「この人の作品もね」
「短いのね」
「だからね」
それでというのだ。
「別にね」
「読書感想文に選んでも」
「しかも定番だしね」
「ああ、読書感想文の」
「太宰の作品もね」
こう言うのだった。
「読めばいいわ」
「そうなのね」
「まあ斜陽とか人間失格は暗いから」
その作風がというのだ。
「あまりね」
「咲っちとしてはなの」
「お勧め出来ないわ」
「そうなのね」
「読むなら」
太宰の作品をというのだ。
「富岳百景とか走れメロスとか」
「斜陽とかと同じ代表作でも」
「明るい作品でもっといい作品は」
それはというと。
「御伽草紙なんかね」
「御伽草紙?童話?」
「それを太宰がアレンジして書いた作品で」
そうした作品でというのだ。
「面白いから」
「読んだらいいの」
「ええ、読書感想文に向いてるから」
「いいのね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「かちかち山はね」
御伽草紙の中にあるこの作品はというのだ。
「かなりえげつないわよ」
「かちかち山って原典の狸って極悪非道よね」
同級生はまずこのことを思った、近年になってアレンジされているが原典の狸の非道さはかなりのものだ。
「本当に」
「そう、それが太宰のお話だと」
そのかちかち山ではというのだ。
「狸はただのださい中年のおじさんで」
「悪いことしてないの」
「それでも純真な美少女の兎を好きになって言い寄って」
そうしてというのだ。
「ああした風にね」
「殺されるの」
「そうなの、酷いでしょ」
「いや、好きになっただけであれはないわよ」
同級生も驚いて言った。
「流石に」
「けれどそれがよ」
「太宰のかちかち山なの」
「そうなの、他の作品もアレンジしているけれど」
それでもというのだ。
「けれどね」
「かちかち山はそうした風になってるの」
「そう、だから」
それでというのだ。
「読むにはね」
「覚悟が必要なの」
「そうよ、面白いけれど」
「ううん、そうなの。けれどね」
同級生はここまで聞いて考える顔になって言った。
「何かお話聞いたら面白そうね」
「そう思った?」
「咲っちが言った通りにね」
面白いと、というのだ。
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