第二十一話 哀愛その十七
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「そちらにね」
「するのね」
「そうするわ」
こう颯姫に答えた。
「折角だし」
「それではね」
「ではそれぞれ」
「楽しみましょう」
乾杯をしてそれからだった。
四人は四方から卓を囲みそのうえで飲んで食べはじめた、庚はチーズケーキを食べてそれからだった。
赤ワインを飲みそして言った。
「紅茶もいいけれど」
「ワインもなのね」
「ケーキとかには合うのよ」
「洋菓子には」
「そうなのよ」
食べて飲んでの言葉である。
「これがね」
「そう言われると」
「確かにそうですね」
颯姫だけでなく遊人も頷いた。
「これが意外と以上にです」
「合うわ。それに」
颯姫はその遊人を見て言った。
「同じ考えになったわね」
「おや、確かに」
「それは何よりね」
「何よりですか」
「ええ、よかったわ」
こう言うのだった。
「本当にね」
「それは何よりです、では」
「今はね」
「お茶とケーキを楽しんで」
この二つをというのだ。
「それからです」
「それぞれのお家に帰りましょう」
「それではね」
颯姫も頷いた、そしてだった。
地の龍の面々は今は四人で楽しんだ、それからそれぞれの家に戻った。颯姫は家に帰った時にふとだった。
彼のことを思い出した、するとふと一緒にいた父に言われた。
「楽しいことがあったのか」
「楽しい?」
「機嫌がよさそうに見えたが」
「いえ、私は別に」
「そうか。気のせいか」
「あなた、颯姫は顔に見せないでしょ」
母はこう言った。
「感情がね」
「ああ、乏しいな」
「そうした娘だから」
「そうだな、子供の頃からな」
「そこがまた可愛いけれど」
「娘としてな」
両親は笑顔で話した。
「そうだな、だがな」
「ええ、そうした娘だから」
「私の気のせいか」
「きっとね。ただそう思ってくれたら」
母はこうも言った。
「それはそれでね」
「いいな」
「そうよね」
「それはそれでな」
「嬉しい。私が」
颯姫は両親の今の会話について思った。
「そう思ったのかしら」
「それなら思え」
「素直にね」
両親はその彼女にさらに言った。
「悪いことじゃないわ」
「いいことがあったらそう思うのはな」
「それが人間だから」
「それならいい」
「そうなのね」
颯姫は今はこう言うだけだった、後で洗面所で歯を磨く時に鏡を見てもいつもの表情だ。だが何か変わったかもしれないと自分でも思ったのだった。
第二十一話 完
2023・3・23
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