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ハドラーちゃんの強くてニューゲーム
第2話
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では左腕のみで戦わなければ……ならんか?」
本当は、ロカのあの行動がアバンの勇気を助長した事をハドラーちゃんは知っている。だが、今はアバンの修行の旅に必要な憎まれ役を演じなければならない為、こういう言い方しか出来ないのだ。
「よくも……よくも私の友を……許さん!」
その途端、アバンはロカが落とした剣を拾って逆手に持った。
(来る!アバンストラッシュが!……だが……)
強くてニューゲーム(いま)ならハドラーちゃんでも解る。
アバンが今から放つアバンストラッシュは、アバンが生まれて初めて撃つアバンストラッシュである事を。その証拠に、カール城での初対戦(ここ)だけ技名を叫ばなかったからだ。
(だとすると……威力は間違い無く……デルムリン島で受けた1発より劣る筈!)
なら、ここで(未完成の)アバンストラッシュを押し返してしまえば、皆がカール王国に引き篭もってる場合じゃないと悟るだろう。
だが、アバンにへし折られかけた上にロカに斬り落とされた右腕はまだ本調子ではない。つまり、閃熱呪文(ベギラマ)だけでアバンストラッシュを押し返さねばならないのだ。
(だがやるしかない!アバン!貴様がバーンに対抗する者達の希望なのだ!)
閃熱呪文(ベギラマ)!」
「うおぉーーーーー!」
やっぱり……ハドラーちゃんの予想通り、未完成版アバンストラッシュが閃熱呪文(ベギラマ)を押し返してハドラーちゃんに直撃する。そして、閃光の中に消えたハドラーちゃんを観て歓喜するカール王国の兵士達。
「やったぞ!アバンが魔王を倒した!」
「やった……ヘヘッ」
だが、周囲の歓喜に反して、アバンは臨戦態勢のままだった。
「いや……魔王はまだ生きています」
「えっ!?」
そう言うと、アバンが無造作に置かれている左腕を指差した。
そう、ハドラーちゃんは閃熱呪文(ベギラマ)が未完成版アバンストラッシュに敗けたと悟った途端、僅かに動く様になった右腕に覇者の剣を生やして自分の左腕をわざと斬り落としたのだ。
「ヤツが本当に死んだのならこの手も灰と化すはず。まだ生きてる証拠です」
「フハハハ!よく見抜いたな。今日のところはまず引いといてやろう。だがあのくらいの力では俺は倒せん。絶対にな!フハハハハ!」
ハドラーちゃんの左腕は、即刻アバンの火炎呪文(メラゾーマ)で焼却処分された。
(たしかに……今の私の力ではあの魔王には勝てない……)

未完成版アバンストラッシュの中に隠れる形でカール王国を去ったハドラーちゃんが、アバンに伝えたい事を独白する。
(アバンよ、これが始まりなのだ。俺との戦い。大魔王バーンとの戦い。そして……地上消滅を阻止する為の戦いのな……)
そして、ハドラーちゃんは祈る。カール城での初対戦(このたたかい)が、アバンの修業の旅の後押しになる
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