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イベリス
第百二話 終わりゆく夏その十二

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「まあ冬は東京はさっきもお話したけれど」
「寒いから」
「だからね」
 それでというのだ。
「まあ厚着して煖房もね」
「しっかりしないとね」
「厳しいけれどね」
「本当に東京の冬は寒いわ」
「冬はそうだけれど今の咲ちゃんが言ったことはね」
「普通?」
「まあそう言ってもね」
 それでもというのだ。
「いいわね」
「そうなのね」
「これがね」
 その様な生活がというのだ。
「満足出来るならそれでいいわよ」
「そうなのね」
「満足出来たらね」
 そうであったならというのだ。
「人間それで勝ちだしね」
「その人が」
「そう、どれだけお金持っても満足出来ないならね」
「駄目ってことね」
「地位があってもね、けれど自分がそうなって満足出来たら」
「それでなのね」
「まあ藤原道長さんは人臣を極めてだったけれど」 
 そのうえで満足したがというのだ。
「あの和歌もね」
「あれそういえば満足してるって意味にも取れるわね」
「権勢を極めてね」
「それで傲慢に詠ったって意味にも取れて」
「それと共にね」
「もう満足ってね」
 教科書にも出ている彼の和歌はというのだ。
「そうも取れるでしょ、それで私はね」
「あの和歌はそうした意味だと思ってるのね」
「そうなのよ」
「そうなのね」
「けれど満足したら」 
 それがどういったものでもというのだ。
「自分がそうなれたらね」
「勝ちね」
「そうよ、もう結局はね」
「自分が満足したらなのね」
「勝ちよ」
「そうしたものね」
「ええ、そのことも忘れないでね」
 愛は咲に高級住宅街の中でにこりと笑って話した。
「お金や地位もね」
「自分が満足出来たらよし」
「そうしたものよ」
「主観次第ね」
「そうしたものはね」
 笑顔で話してそうしてだった。
 二人で今は高級住宅街を見て回った、色々なものを語りながらそうしたものも話していったのだった。


第百二話   完


                   2023・3・8
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