第二十一話 哀愛その七
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「もう」
「大丈夫だよ、きっと新しい出会いがあるよ」
「私にはもう」
「あるよ、きっとね」
「出会いが」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「幸せになれるから。だからもうね」
「現世に戻って」
「そこで生きて」
「では貴方とは」
「また生まれ変わったら」
「その時に」
「うん、その時にね」
まさにというのだ。
「ずっと永遠にね」
「一緒になるのね」
「そうなろう」
「そして今の生では」
「新しい人と幸せになるんだよ」
こう言ってだった。
少年は姿を消した、それと共にだった。
少女の心は現世に戻った、そのうえで。
俯き両手を畳についてはらはらと泣いた、目を開いたまま口を半ば開けてただひたすら泣いていた。
その少女を見てだ、昴流は女、母である彼女に言った。
「これで、です」
「娘は救われたのですね」
「この世界に戻れました」
「有り難うございます」
「はい、ですが」
昴流は沈痛な面持ちで彼女に話した。
「救われたかどうかは」
「違いますか」
「人は時として現世にいる方が辛い場合がです」
その方がというのだ。
「ありますので」
「だからですか」
「娘さんは戻れましたが」
現世にというのだ。
「しかし救われたかは」
「わからないですか」
「きっと新しい出会いはあります」
昴流はこれはあると言った、少年と少女のやり取りは知らないが。
「ですがそれまでの間」
「娘は」
「別れを悲しみます」
「そうですか」
「はい、そのことはどうしようもありません」
「仕方ありません。人は必ず死ぬのですから」
女は俯いて述べた。
「そうであるからこそ別れもです」
「ありますね」
「愛する人との別れも」
これもというのだ。
「あるもので。ですから」
「だからですか」
「はい」
まさにというのだ。
「娘もです」
「そう言われますか。確かに別れはありますね」
昴流は今度は自分のことを話した。
「愛する人達との」
「ですから」
「では娘さんは」
「暫くは私と主人が常に傍にいますので」
「慈しんでくれますか」
「親なので」
それ故にというのだ。
「必ず」
「それはいいことです、では」
「そうしていきます」
「宜しくお願いします、では僕は」
「これで、ですね」
「また何かあれば」
深々と頭を下げてだった。
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