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第二十一話 哀愛その一

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                第二十一話  哀愛
 空汰と嵐はディーゼルの列車に乗って東京から遠く離れた駅に来た、駅は無人駅で線路は駅の左右うに一列ずつで周りは閑散としていた。
 その駅に降り立ってだ、空汰は言った。
「東京におるとな」
「こ¥うした場所はないわね」
「ああ、ほんまにな」
「思えば私達がかつていた場所も」
「高野山もお伊勢さんもな」
「大きなお寺に神社だから」
「自然は豊かでもな」
「人も建物も多くて」
「寂しいことなかったな」
「静かであっても」 
 それでもとだ、嵐は周りを見て話した。
「思えばね」
「決して寂しくなかったな」
「そうね、それでだけれど」
 嵐はさらに言った。
「ここに来てね」
「思うな」
「ええ、ここは寂しい場所ね」
「東京にも高野山にもお伊勢さんにもないな」
「そうしたものがあるわ。ただ」 
 嵐は幼い頃を思い出してこうも言った。
「私は物心ついた頃はもっと寂しくて」
「そやったんかいな」
「餓えていたわ」
 そうだったというのだ。
「本当にね」
「ああ、嬢ちゃんお伊勢さんに迎えられるまでは」
「殆ど一人でいて食べるものもね」
「なかったな」
「ゴミ箱を漁る烏を羨ましくも思ったわ」
 そうして食べる彼等をというのだ。
「そう思ったこともね」
「あったんやな」
「そうだったわ」
「嬢ちゃん相当辛い子供時代送ったとは聞いてたけどな」
「ほんの少しの間よ。ゴミ箱を見ていた時に」
 烏が漁っていたというのだ。
「その時に後ろから声をかけられて」
「その人がか」
「高野山の方で」
 それでというのだ。
「巫女に迎えられてそれからは」
「餓えることもなかったか」
「衣食住全てが保証されて」
 そうした生活になりというのだ。
「修行とそれで得た力を使う」
「そうした日々になったんやな」
「学校にも通ってね。よかったわ」
 嵐は今も表情がない、空汰に閑散の先にいるものを見つつ話した。
「迎えられて」
「さもないとか」
「私は死んでいたわ」
「餓えでやな」
「まさにね」
「そんな風やってんな」
「それでだけれど」
 嵐はさらに言った。
「これからだけれど」
「ああ、ここに皇昴流さんが来てる」
「最後の天の龍が」
「そやからな」
「これからお会いして」
「東京に戻るで」
「皇さんを連れて」
「そうしよな」
「わかったわ、それではね」
「ここは今は駅前はこうでもな」
 空汰は今も閑散を見ている、そのうえでの言葉だった。
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