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仮面ライダーAP
暗闘編 ヘレン・アーヴィングという女 前編
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繰る警部は、忌々しげに焼け焦げた地表を睨み付けている。

 世界各地からヒーローと称賛されている新世代ライダー達だが、彼らに対して懐疑的な視点を持っている人々も決して少なくはない。ライダーの力を信用しない現地警察が協力を拒んだ結果、被害が余計に拡大してしまったケースもある。

「いいえ、彼らはこの件には関わっていないわ。現在活動している22名の新世代ライダーのうち、この某国に滞在していた者は1人も居なかった」

 だが。ぷっくりとした桜色の唇を開き、ヘレンは警部の推測を否定していた。現地入りする前から対策室本部と連絡を取っていた彼女は、新世代ライダーが今回の件に関与していないことを予め確認していたのだ。

「仮面ライダーの仕業じゃねぇとしたら……残る線は構成員同士の仲間割れかぁ? 何もかもが吹き飛んじまった今となっては、迷宮入りかも知れねぇが……何にせよ、傍迷惑なモンだぜ。あのジークフリート・マルコシアン大佐さえ健在だったらなぁ……」

 扇情的で艶やかな唇から紡がれる彼女の言葉にため息を吐き、警部は力無き人々の嘆きを代弁するかのようにぼやくと、独り踵を返して行く。かつて旧シェードの侵略からこの国を守り抜いた「英雄」の名を呟く彼は、諦念を露わに空を仰いでいた。

(ジークフリート・マルコシアン……11年前、旧シェードの侵攻を防いだと言われている救国の英雄……か。確かに彼が居なくなってから、この国の情勢は不安定な時期が長く続いていた。きっと、そこをノバシェードに付け入られたのね)

 11年前の2009年に起きた、旧シェードによる軍事侵攻。その脅威からこの国を救った伝説の英雄――ジークフリート・マルコシアン大佐は、消息を絶った今もこの国の象徴的な存在として祭り上げられている。

 首都・エンデバーランドの国立中央公園に聳え立つ銅像をはじめ、ヘレンは至るところで彼の勇姿を描いた作品を目にして来た。政府官邸の壁に大きく描かれた肖像やポスターのデザイン、さらには教科書の表紙にまで彼の姿が題材として使われている。ここまで来ると、見ない方が難しい。それほどまでに、ジークフリートの存在感は絶対的であった。
 灰色の野戦服を纏う筋骨逞しい肉体。猛獣を想起させる暗い茶髪に、右眼を覆う黒い眼帯。勇ましく精悍な顔立ち。そんな屈強な軍人だったというジークフリートの雄々しい姿は、この国における「正義」の象徴(シンボル)として民衆に広く知られている。

 それほどのカリスマ性を持っていたジークフリートが姿を消してから、すでに11年。消息を絶って間もない頃よりは情勢も安定化しつつあるようだが、それでも彼が健在だった頃と比べて治安が芳しくないことには違いない。
 混乱期の尾を引いているこの小国は、ノバシェードの潜伏先としてはうってつけだったのだろう
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