暗闘編 ヘレン・アーヴィングという女 前編
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な肉体を隅々まで舐め回すかのような粘ついた視線を注いでいる。
そんな彼女が現場から発見した、1本のネジ。それがノバシェードの関与を裏付けているのだという彼女の主張に、屈強な黒人である現地警察の警部は眉を顰めている。ヘレンの唇や胸元に不躾な視線を向けながら、彼は訝しむように目を細めていた。
「つまり……この事態にはノバシェードが噛んでるって言うのかい。対策室の特務捜査官殿」
「現場の焼け跡から発見されたこの型は、1980年代まで徳川清山が改造人間に使用していたモノだわ」
「1980年代だと? 奴が旧シェードを創設したのは確か、11年前の2009年だろう。そんな昔に使っていたネジなんて使い物になるわけ……おい、まさか」
「察しの通りよ、警部。このネジは確かに黎明期の頃から、改造人間の部品として重宝されて来た。それでも2000年代以降においてはさすがに型が古過ぎて、簡素な量産型にしか使われなくなって行った……」
ノバシェードの構成員達の多くは、旧シェードの改造被験者であるとされている。そして彼らは皆、旧シェードの要求スペックに満たない「失敗作」ばかりであった。
改造人間にも、ただの人間にもなり切れない最も中途半端で不安定な存在。そのような「異物」を受け入れられるゆとりを持たない人間社会との衝突、差別、迫害は必至であった。その結果が招いた悲劇の数は、対策室の人間でなくとも肌で理解している。
旧型の部品だという改造人間のネジが、この場で発見された。それが意味するものに辿り着いた警部は、救いようのないこの世界への諦観を胸に、朝陽の空を仰ぐ。手元のネジに視線を落としているヘレンもまた、そんな彼の胸中を声色から察していた。
「そんな旧型をあてがわれた挙句、『失敗作』としてお払い箱にされた。……ここに居たのは、そういう奴らだったってことか」
「ノバシェード構成員の遺体からは、95%以上の確率でこのネジが検出されている。どんな経緯でこんなことが起きてしまったのかはまだ分からないけれど……ノバシェード絡みであることだけは間違いなさそうね」
「となると……例の『仮面ライダー』って奴らがノバシェードを山ごとブッ飛ばした……ってところか? 救世主だか何だか知らねぇが、他所様の国でヒーロー面して好き勝手暴れ回りやがって……」
この山地にはノバシェードが潜伏していた。ならば、ここがアジト諸共吹き飛ばされた原因は何なのか。そこに思いを巡らせる警部の脳裏には、世界各地を転戦しているという「仮面ライダー」の存在が過っていた。
首領格が倒れてからも世界中で散発的にテロを起こしているノバシェード。そんな彼らを打倒するべく、全世界を駆け巡っているのだという22人の新世代ライダー。その者達がこの地に現れていたのではないかと勘
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