第三部 1979年
曙計画の結末
部隊配属 その2
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た。
(それぞれ、現実世界のロッキード、ジェネラル・ダイナミクス、ボーイングである)
展示会の昼食は、東ドイツの人々を驚かせるものであった。
1972年にソ連で販売されて以降、東欧圏になじみの深いペプシコーラは元より、様々な品目がテーブルに並べられた。
ペプシの系列企業が作ったフライドチキン、牛肉の入ったタコス、チーズ入りのブリトー。
ポテトチップス「レイズ」やトウモロコシを引き延ばし作ったトルティーヤ・チップス「ドリトス」。
幼い頃、外交官の父ヨーゼフに付いて行って東欧や文革前の支那で暮らしたアイリスディーナ。
彼女にとっても、このようなアメリカのファーストフードや駄菓子は初めて見るものだった。
一応、西ベルリンに買い出しに行ったボルツ老人や党幹部の購入ルートを持っているアーベル・ブレーメによって、コカ・コーラや西側の食べ物は知ってるつもりだった。
だが、壮年を過ぎた二人にとって、菓子といえば西ドイツの菓子であり、欧州の菓子だった。
熊のグミキャンデーや、ベルギーのチョコレート、オランダの焼きワッフルだった。
初めて食べる米国のフライドチキンの味は、形容しがたいものであった。
カリカリに焼きあがった衣と、肉汁が出てジューシーなチキン。
子供のころからパーティ慣れしているアイリスディーナは、あまり食べない方だった。
こういう場で食べ過ぎると女性として粗野にみられると、教育されたためである。
だがチキンやタコスの味に魅了され、我を忘れ、ついつい料理に手が伸びた。
冷えたペプシを脇に置いて、取り皿に盛った料理を食べている時である。
「見た目とは違い、随分と健啖家なのですね」
そう声をかけてきたのは、ゼネラルダイノミクスのビジネスマンだった。
彼の話によれば、新型のYF-16戦術機をゼネラルダイノミクスは開発中だという。
「ミス・ベルンハルト。
よろしければ、一度試験機のYF-16を試乗してみませんか。
合衆国では女性パイロットはいまだ認められていませんので、飛行データの参考が欲しいのです」
この時代、西側の士官学校は婦人の入校を認めていなかった。
史実を参考までに言えば、米軍は1980年、仏軍1983年、自衛隊1992年である。
婦人兵は、後方支援や医療部隊にのみ認められていたのだ。
そしてフランス軍に至っては、1951年の規定によって既婚者は一切軍務に付けないとされていた。
この規則は、1980年代にフランス軍からはなくなったが、イスラエルなどでは部分的に存続している。
(2017年までフランス軍では婦人兵の潜水艦勤務を禁止していた。これはわが自衛隊も同様であった)
軍隊は、現代社会に残された男の砦の一つであったのだ。
さて、アイリスディーナの話に戻そう。
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