暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第156話:知られざる父の姿
[7/7]
[8]
前話
[9]
前
最初
[1]
後書き
[2]
次話
息子の姿を、輝彦と彼の妻であり颯人の母であるアリスは微笑ましく見つめていた。
その時、控室の扉がノックされた。まだ開演までは時間がある。部屋の時計だけでなく懐から取り出した懐中時計で時間を確認した輝彦は、首を傾げながらノックしてきた相手に入室の許可を出した。
「どうぞ?」
輝彦が扉の向こうに居る相手に声を掛けると、入って来たのは長い白髪を持つ男装した1人の女性であった。手品を再現しようとしていた颯人とそれを見ていた奏は、突如部屋に入って来た女性を気にも留めない。
だが輝彦とアリスの2人は違った。彼はその女性の姿を見た瞬間、一瞬鋭い視線を彼女に向けた。
「お前は……」
「ん? どうした、父さん?」
「おじさん?」
手品の方に集中していた颯人と奏だったが、輝彦の口から剣呑な声が出た事に意識をそちらに向ける。そこで2人は漸く部屋に見知らぬ女性が入ってきていた事に気付いた。
凛とした雰囲気の大人の女性に、束の間颯人と奏は目を奪われる。だが輝彦は、そんな2人を優しく部屋の外へと誘導した。
「さ、2人共。もう直ぐ開演の時間だから客席で待っていなさい。私はこれから仕事の話をしなければならないから」
「「えぇ〜!?」」
「我儘を言ってはダメですよ。さ、2人共、こっちへ」
アリスに手を引かれて、2人は控室から連れ出される。その最中、颯人とその女性……サンジェルマンの目が合った。
「……フフッ」
「?……」
颯人と目が合った瞬間、サンジェルマンは凛とした雰囲気を崩し優しく彼に微笑みかけた。その意味が分からず首を傾げている間に、2人は控室から連れ出され客席の方へと向かって行った。
室内には、輝彦とサンジェルマンの2人が残される。2人だけになった瞬間、輝彦は彼女に向け常人であれば卒倒するような気迫を向けた。
「何をしに来た……」
「近くに寄ったので」
「ならばさっさと失せろ。こちらからお前達に話す事など何もない。彼女もだ」
取り付く島もない様子の輝彦に、サンジェルマンは小さく頭を下げ踵を返し部屋から出ようとした。
だが彼女がドアノブに手を掛けた瞬間、その背に輝彦が声を掛けた。
「颯人に手を出そうなどとしてみろ。その時は、私も彼女もお前達の敵となる」
殺気混じりに放たれた警告に対し、サンジェルマンは一度動きを止めた後何も言わず部屋を出た。
それから開演までの間、輝彦は終始彼女が出て行った後の扉を睨み付けていた。
そして颯人は、自分達が控室を出た後、輝彦とサンジェルマンの間にそんなやり取りがあった事等知る由もなく、その後に行われた父のマジックショーを心の底から楽しんだのであった。
[8]
前話
[9]
前
最初
[1]
後書き
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ