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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
F5採用騒動 その2
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ところだな。
忌々しい事に、欧州勢の中で、ダッソーの計画だけが独自性を持っているわけだが……
まあ、今はそれはよい」
 
 大臣は、脇に立つ榊政務次官をかえりみると、
「では……」
 と、いかにも爽快らしくわれから言った。
「米国の動きとしてはどうなのだね。榊君」
「米海軍のヘレンカーター提督を中心とする研究チームによって、新型兵器を開発中と聞いております」
「それは、いったいどういう事なんだ」
「海軍より依頼を受けたヒューズ航空機が、フェニックスミサイルの製造を開始したとの事です」
「フェニックスミサイルだと……」
「今までのクラスター弾を数倍上回る、戦術機に搭載可能な、超強力なロケット弾です」
「そいつはすごい。もし手に入れば……」
榊の言葉を、大臣は興奮した様子で尋ねる。
「たしかに、ヒューズ航空機にしか、作れない代物なのだな」
「その通りです。問題はいかにして我々の手に入れるか」
「そいつは簡単だ。新型の戦術機ごと導入するのよ」
「ミサイルどころか、機体ごとですか……
開発中のものは複座の戦術機で、空母での運用を前提にした艦載機ですよ」

 榊は、ちょっと目をつよめて。
「わが帝国海軍からは、既に空母機動部隊の運用ノウハウが失われて30年の月日を経てます。
まず問題になるのは、操縦席が複座という事でしょう。
操縦士とレーダー管制官を乗せる問題は、スーパーコンピューターでも積めば、解消するでしょうが……」
彼の話を、彩峰が受けて、深刻そうに大臣にうながした。
「たしかに、是親(これちか)のいう複座と運用コスト……
その問題を解決しない限り、採用から時間を置かずに退役をするのは、火を見るより明らか……。
我が日本の国情を考えますと、そう思われます」
すると大臣は、彩峰に聞き返した。
「そうか。ハイネマン博士の作品は、それほどまでに高くつく代物(しろもの)なのかね」
「わが国の(たかむら)君や木原もそうですが……」
「どうもロボット工学の研究者というものは、工業デザイナーというより芸術家なのです。
彼らの作品は、工業製品としての兵器というより、数十人の技術者が作り出した芸術品なのです。
性能自体は間違いなく、一線級なのでしょうが……」
榊は、やや間をおいてから、
「それに、今欧州勢が開発中なのはF5系列の機体ですから、F4系統を使っている我が国に導入するにしてはノウハウも役に立たない」
と、明答した。

 すると、ク、ク、クと噛みころし切れない笑いを白い歯にもらしたマサキが脇から現れる。
大臣の側近はみな、緊張していた氷のような空気にひびいて、それは常人の笑いとも聞えなかった。
どこかで、べつな(あや)しいの物がふと奇声を立てたかとおもわれた。
「早い話が、グレートゼオ
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