希望じゃない
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「はあ、はあ……!」
傷ついた体を引きずりながら、ハルトは現在地を見渡した。
風のウィザードになって教会を飛び出し、降り立った場所は、ハルトが思っていた所とは違う。
「あれ? ここ、こんなところだったか?」
これまで幾度となく、監督役との接触の場所として訪れた教会は、見滝原の街、その外れにあった。同じく廃墟ではあったが、
だが今回の教会があった場所は、離れて少し飛んでも、町とは言えない場所だった。今限界まで逃げ切って倒れた場所も、山の中腹にある川岸の荒野だった。
「いつもの教会じゃなかったのか……?」
「どうやら彼らは、同じ教会をいくつも作り出していたようだね」
その声に、ハルトは振り返る。
ハルトと同じく、体に赤い傷を作っている海東が、ディエンドライバーを手からぶら下げながら歩み寄ってきていた。
「アンタは……海東、だよね?」
「やあ。ウィザード。いや、ハルト君と呼んでもいいのかな」
「……誰のせいでこうなったと思ってるのさ」
ハルトは目を吊り上げる。
だが、海東はハルトの反応など意に介さずに笑みを絶やさない。
「さて。この事態だ。士を助けるために、君も協力したまえ」
「今俺珍しく人の事を殴りたいって思ってるよ」
ハルトは恨めし気に言いながら、息を吐いて自らを落ち着かせる。
「その事態っていうのは誰のせいでなってると思うの?」
「まあまあ。落ち着きたまえ。僕も彼らに騙されたんだ。お互い被害者じゃないか」
「アンタを被害者呼ばわりは出来ないと思うんだけど」
ハルトは文句を言いながらも、大きくため息を付いた。
手に付いた指輪を収納したコネクトと入れ替え、発動させる。
『コネクト プリーズ』
「おや? どこに行くんだい?」
マシンウィンガーを取り出したところで、海東が尋ねる。
ヘルメットを被り、マシンウィンガーに乗ったハルトはぶっきらぼうに答えた。
「戻るんだよ。ラビットハウスに」
「僕も乗せて行ってくれないかい?」
海東は、顔に笑顔を張り付けたままだった。
むっとしながらハルトは、座席から予備ヘルメットを取り出す。数回ヘルメットを手に叩きつけたハルトは、そのまま海東へ差し出す。
「ありがとう、ハルト君」
「少しは反省してよ」
だが、ハルトの小言などどこ吹く風とばかりにヘルメットを受け取った海東は、ヘルメットを被ってマシンウィンガーの後ろに座り込む。
「さあ、早くしたまえ。こんなところからはおさらばしようじゃないか」
ハルトへ発車を促す海東。ハルトはため息を付いて、マシンウィンガーに跨ろうとする。
だがその時。
「ハルト!」
ハルトの名を呼ぶ声が聞こえた。
ハルト
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