第七百二話 薩摩の言葉でその十三
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「しかしな」
「どちらもですね」
「食べたいとはな」
「思いませんね」
「全くな」
それこそというのだ。
「一度もな」
「そうですね、私もです」
「それは同じだな」
「はい」
大尉に一言で答えた。
「蛸も烏賊も鯨も」
「全てだな」
「口にしません、ましてや」
上等兵はさらに言った。
「海鼠はです」
「あれか」
「中国でも食べますが」
「日本ではだな」
「さらに食べますね」
「養殖までしてな」
「左様ですね、それがです」
とてもという口調で言うのだった。
「私としてはです」
「信じられないか」
「あんなものが食べられるのか」
「日本人は海胆も食べるしな」
「あと釣っても獲れても見向きもしない」
そうしたというのだ。
「魚もです」
「鮫なりエイなりアンコウなりな」
「毒のある河豚でさえ」
「あと鱧もですが」
「鱧は小骨が多いというな」
大尉もこのことは知っている、ただし大尉は鱧は食べるものと思っておらず細長く狂暴そうな顔の魚としか思っていない。
「そうだな」
「そうなのですか」
「しかしだ」
それでもというのだ。
「連合の国々特にだ」
「日本ではですね」
「食べるな」
「しかもかなり好んで」
「そうしているな」
「何がいいのか」
上等兵も鱧について言った。
「特に河豚です」
「エウロパ戦役でもわざわざ釣ってな」
「調理して食べていましたね」
「刺身や唐揚げ、鍋にしてな」
「カルパッチョやアクアパッツァにもして」
「河豚の毒は死ぬ」
当たればというのだ。
「今は解毒剤があるが」
「普通に危険ですね」
「河豚一匹の毒で二十人は殺せる」
「恐ろしい猛毒ですね」
「そんなものをだ」
そうした毒を持っている魚をというのだ。
「美味いと言ってな」
「食べていますね」
「とんだ奇食好きだ」
こう言うのだった。
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