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第八十一話 甲子園へその五

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「間違っても揉めないでね」
「周りと」
「あんたも達川君も阪神ファンだから」
「阪神を応援することね」
「そうしたらね」
「別に何もないわね」
「あと酔っ払いとか変な人にはね」
 そうした連中にはというのだ。
「くれぐれもね」
「近寄らないことね」
「そうしたらあそこはね」
「皆応援に夢中で」
「それでね」
 母はさらに言った。
「阪神ばかり観てるからね」
「その中に入ることね」
「それが一番よ」
「球場の人達と一緒に応援ね」
「前に行った時もそうだったでしょ」
「中学の時かな恵達と行った時ね」
 いつもの五人で行ったのである。
「その時ね」
「そう、飲んで食べてもいいけれど」
「応援が第一ね」
「何と言ってもね、風船も飛ばして」 
 甲子園名物のそれもというのだ、七回になると風船を吹いて飛ばすのが阪神の応援の特徴の一つなのだ。
「六甲おろしもね」
「歌うのね」
「そうしてきたわいいわ」
「それじゃあね」
「それで相手は何処だ」
 父はこのことも聞いた、実は二人共まだこのことは聞いていないのだ。
「それはそうとして」
「巨人よ」
 一華もすぐに答えた。
「あそこよ」
「ああ、じゃあ勝てるな」
「まずよね」
「巨人相手だと二十点差で勝たないとな」
 父は笑ってこうも言った。
「やっぱりな」
「達川君十点差って言ってたけど」
「十点差じゃ甘いな」
「二十点なの」
「巨人相手だとな」
「巨人相手なら大丈夫ね」
 母もにこりとして言った。
「ほぼ確実に勝てるわ」
「お母さんもそう思うのね」
「だって戦力が違い過ぎるし」 
 まずこのことがあってというのだ。
「采配もね」
「巨人の監督さんって采配下手よね」
「もう代々ね」
「そうよね」
「只でさえ弱いのに」
 それに加えてというのだ。
「采配も駄目だから」
「余計に負けるのね」
「巨人戦は成績上げるチャンスよ」
「チームも選手の人達も」
「ここぞとばかりに抑えて打って走ってね」
 そうしてというのだ。
「そのうえでよ」
「勝つことね」
「ただ勝つんじゃなくて」
「圧勝ね」
「そうしてね」
「成績も上げるのね」
「そうしたらいいのよ」
 絶対にという言葉だった。
「それも甲子園でやるのなら」
「余計にいいのね」
「ドームで相手に見せつけてもいいけれどね」
 阪神の活躍をというのだ。
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