第八十四部第一章 梟雄の復活その三十六
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「この五日我が軍は一気に後れを取った」
「僅か五日ですが」
「その五日にですね」
「二つの防衛ラインを突破され」
「多くの将兵と艦艇も失いましたが」
「それでもだ」
敗北は大きなものであった、だがそれでもというのだ。
「その苦境もな」
「閣下が戻られる」
「そうなるので」
「覆す」
「そうなりますね」
「最初劣勢に立っていたが勝った」
戦争、それにというのだ。
「そうしたことは過去多いな」
「はい、実際に」
「その通りですね」
「歴史においては」
「最後だ」
サルマーンは一言で言った。
「大事なことは」
「最後がどうか」
「最後の最後で勝っているか負けているか」
「そのことが大事ですね」
「左様ですね」
「そうだ、途中まで勝っていてもだ」
それでもというのだ。
「最後で負けているとな」
「敗北ですね」
「敗者となりますね」
「途中まで勝っていても」
「最後に敗れると」
「項羽は敗北を知らなかった」
サルマーンは中国の歴史に名を残す覇王の話もした、この英傑に名前はこの時代にも残っているのだ。
「叔父と共に旗揚げしてからな」
「そうでしたね」
「常に負け知らずでした」
「戦場では己の武勇と采配で勝ってきました」
「五十六万の大軍に三万で勝ったこともあります」
この時敗れた劉邦は命からがら逃げ出してもいる。
「秦のあらゆる堅固な守りも突破し」
「劉邦を何度も打ち破りました」
「韓信も黥布も訪越も勝てませんでした」
「どの者も項羽には勝てませんでした」
「だが最後はだ」
その負けを知らなかった項羽がだ。
「敗れた」
「そうなりましたね」
「連戦で疲弊し」
「そしてでしたね」
「遂には」
「垓下の戦いで大軍を前にしてだ」
劉邦が韓信と黥布の軍勢を戦場に集め項羽に決戦を挑んだのだ。
「そこで遂に敗れた」
「そして死にましたね」
「四面楚歌の後で」
「そうなりましたね」
「項羽が敗れたのはその一戦だけだった」
まさにそれまでは常に勝っていたのだ。
「そしてそこで滅んだ」
「垓下の戦いに敗れ」
「その結果ですね」
「項羽は滅んだ」
「敗者として歴史に名を残しましたね」
「劉邦は常に負けていた」
項羽と戦った彼は逆にそうだったというのだ。
「秦とも実はだ」
「項羽程戦ってはいませんね」
「降る兵はどんどん受け入れ」
「そして先に進んでいましたね」
「誰でも受け入れる劉邦に秦の兵はどんどん降り」
「領民も彼を受け入れました」
「そうして進んでいた」
徹底的に戦った項羽とは実に対象的であったのだ。
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