10月
第129話『開店』
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って、実際彼女の額から角が出てきてしまっているのだから。
「「し、失礼しましたぁ〜!!」」
しかしそれに言及するよりも早く、彼らはその場から立ち去っていく。
結果的に、一部始終を見ていた周りのお客さんから拍手が上がるくらいには、スカッとした一幕であった。
上級生だろうと関係なく圧倒する結月に、晴登はただただ感心する。とはいえ、
「結月、あれはやりすぎだって」
「う、だってハルトを守りたくてつい……」
「その気持ちは嬉しいけど、結月に何かあったらどうするの?」
「それは……」
結月が凄いのは当然だがそれはそれ。晴登が言いたいのは、もっと自分を大事にして欲しいということだ。
晴登にそう指摘され、結月はいつの間にか角も引っ込めてしおしおと俯いている。
そもそも、今回は晴登がもっと強ければ結月の力を借りなくて済んだ話である。彼女を守ると決めたのだから、そう何度も守られてしまうとちょっぴり歯痒い。
「大丈夫だった、柊君?」
「う、うん、ありがとう2人共。さすがだね」
「さすが? 何かあったら助けるって言ったでしょ?」
「そうそう」
「でも本当にできちゃうんだから凄いよ。僕にはとても真似できないから……」
狐太郎はそう嘆きながら肩を落とす。
どうにも彼は自分のことを過小評価しているようだが、晴登はそうは思わなかった。
「そうでもなくない?」
「え?」
「だって運動会とか林間学校とか、みんなのために頑張ってたでしょ? 柊君も十分凄いって」
「そんなことは……」
「あるよ」
世辞でも何でもなく、これは晴登の本心からの言葉だ。そして事実でもある。
他人を尊重するのも良いけど、彼はもっと自分を省みるべきだ。
「もっと自信持ちなよ。ね?」
「……うん。ありがとう、三浦君」
晴登が笑顔を見せると、狐太郎は微笑みを返した。
初めて会った時と比べると、彼の笑顔は随分増えた。晴登の影響ももちろんあるだろうが、何より彼を差別しないでくれたこのクラスのおかげでもある。
彼の過去がどんなものかは知らないが、それよりも今が楽しいって思ってもらえるようにこれからも努めていきたい。
「さて、それじゃ仕事に戻ろうか」
「うん!」
トラブルも解決したし、晴登には他の人に任せっきりにしていた仕事があったので、急いで戻ることにした。
その隣、元気良く返事をした狐太郎も自分の仕事に戻ろうとする。が、
「……え?」
「どうしたの? 柊君」
突然、狐太郎がか細い声を漏らしたので、何事かと問いかける。せっかく元気を取り戻したところなのに、今度は一体どんなトラブルが起
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