10月
第129話『開店』
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ある。まさか自分から言い出すとは思っていなかったから、この時は驚いたものだ。
でも彼は今、自分なりに成長の一歩を進もうとしている。それを止める理由は無い。
「何かあったら俺が助けるから」
「……っ! ありがとう!」
晴登がそう申し出ると、狐太郎は目を輝かせて喜んだ。
元よりこれはクラスの出し物。何も1人で頑張る必要はない。サポートし合ってこそ、良い出し物になると思う。
「そろそろ開幕だな。それじゃあ実行委員、何か一言」
「いきなりだな! えぇと……最優秀賞目指して頑張ろう!」
「「「おぉ〜!!!」」」
唐突に大地にそう振られ、何も考えてなかったからさっき莉奈が言っていたことをそのまま言ってしまった。簡単に言っているのはどっちだ。でもクラスがやる気になったっぽいからどっちでもいいか。
*
場所は代わって体育館。そのステージの裏で複数のクラスが劇の準備を着々と進めている。
今回の文化祭で劇を行うクラスは合計4クラス。加えてその全てのクラスが体育館のステージを利用することになっていた。よって、予めそれぞれ公演の時間が決められており、1日のシフトを4分割したものがそのまま各クラスに振り分けられている。
そして最初のシフトに当てられているのが、この1年2組であった。
「緊張してますか?」
「はぅわっ! ……って、優ちゃんでしたか。驚かさないでください。もちろん緊張してますよ? 何せうちは重要な役なので……」
「大役を押し付けてしまってごめんなさい。でも刻ちゃんならきっと大丈夫ですよ」
「うっ、そんなこと言われたらやるっきゃないですね! ドンと来いバッチ来いですよ!」
「ふふっ、頼りにしてますね」
ステージの準備を進める傍ら、優菜が刻に声をかける。
そう、刻は転入早々でありながら、劇で大役を任されているのだ。緊張しない訳がない。
しかし、優菜の応援を受けて腹を括った。マジシャンたる者、この程度で怖気付くなんて情けない。人前に出て目立つことこそが本領なのだから。
……と、自分の心配ばかりをしているが、逆に目の前にいる人物はどうしてこうも落ち着いているのか。
「優ちゃんは緊張しないんですか? 主役なんですよ? お姫様なんですよ?」
クラス投票によって満場一致で主役のお姫様へと推薦された優菜。対して刻は悪役の魔女である。マジシャンだからという推薦理由はよくわからないが、推薦された手前情けない演技はできない。
お姫様、魔女と役が揃えば、やはり題材は『白雪姫』に限る。しかし、そのままでは味気ないので少しアレンジを加えた。何が違うかは本番のお楽しみだ。
「私なんかがお姫様なんて、照れちゃいます
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