暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
10月
第129話『開店』
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
時間というのはあっという間に経つもので、ついに文化祭当日となった。学校中がすっかり飾り付けられ、まさにお祭りが始まろうとしている。生徒たちは浮き足立ち、開始を今か今かと待ち望んでいた。
初めての文化祭だから、当然晴登もその1人でとてもワクワクしていた。のだが、


「やっぱり着なきゃいけないのね……」


2週間ぶりのワンピースを着て、苦笑いを浮かべる晴登。
そう、これこそが目下の悩み。我がクラスの出し物で必要な"女装"である。行為そのものが恥ずかしい上に、人に見せびらかす訳だから気が休まるはずもない。


「よく似合ってるよ。自信持ってハルト!」

「そういう問題じゃないんだけど……まぁありがと、結月」


そう嬉々として褒めてくれるのは、執事服に身を包んだ男装姿の結月だ。正直全然慰めにもなってないけど、一応感謝はしておく。というか、似合っているのはどちらかと言えば結月の方なのだが。


「いいよな、お前は露出度低くて。俺なんて……」

「確かにそのコスプレが恥ずかしいのはわかるけど、今日は逃げちゃダメだよ伸太郎」

「くそ……!」


悔しそうな表情を露わにするのは『ナース服』を着た伸太郎だ。スカートだから下半身の露出度が高めで、女装だからこそ許される領域である。
試着の時に伸太郎が見つからなかったのは、あまりにこれを着たくなさすぎてトイレに逃げていたのが理由らしい。本音を言えば、このコスプレよりは今の方で良かったと内心安堵している。


「会計の仕事なんだから、俺は着る必要ないだろ!」

「俺も同じこと言ったけど、許して貰えなかったよ……」


憤慨する伸太郎に対して、同じ裏方の晴登はもう観念している。何度抗議したところで、どうせ莉奈のプロ意識を覆すことはできまい。
その後も伸太郎は何かぶつぶつと呟いていたが、結局自分の持ち場についた。


「それじゃ俺たちのシフトは午後からだから、頑張れよ晴登」

「目指せ、最優秀賞〜!」


午後シフトの大地と莉奈は、晴登にそう声を掛ける。
簡単に言いやがって。出店系の出し物は初動が肝心だから、午前シフトの方が大変だというのに。

ちなみに最優秀賞とは、この文化祭において最も人気のあった出し物をした団体に与えられる名誉だ。何か景品があるらしいが、詳しくは知らない。まぁやるだけやってみるけど。


「ドキドキしてきた……」

「柊君なら大丈夫だよ」


一方、晴登の隣で縮こまっているのは、本当に女子かと見紛うレベルで完璧な巫女姿となった狐太郎。彼の悩みはコスプレではなく、純粋に接客に対する不安である。

というのも、彼は今回裏方ではなく、接客をしなければならないウェイター係なのだ。しかもこれは本人の希望で
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ