ぺーパーシャッフルD 〜両翼達、動く〜
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「え? そう?」
「あはははっ! きっと、綱吉君の辞書に普通って言葉はないんだよ!」
一之瀬が綱吉の背中から降りると、遠くから一之瀬を呼ぶ声が聞こえてきた。
『一之瀬さ〜ん!』
「あ、は〜い! 綱吉君、私いくね? おんぶしてくれてありがとう!」
一之瀬は呼び掛けられたクラスメイト達の元へ走って行った。
(……なるほど、映画終わりに声をかけやすいように、一之瀬も映画を見にきたわけか)
「……じゃあ、俺達も映画館に入る……」
「あ、ツナく〜ん!」
俺達も映画館に入ろうとしたのだが、綱吉が誰かに声をかけられてしまった。
「あ、麻耶ちゃん!」
声をかけてきたのは、佐藤麻耶だった。
堀北から聞いた話では、最近勉強会夜の部で綱吉にべったりくっついているらしい。
「あ、もしかして今から映画観るところ?」
「うん、あの話題の映画をね」
「わ〜偶然! 実は私も映画観に来たんだよね。軽井沢さん達と一緒に!」
「そうなの? あ、本当だ」
見てみると、佐藤の後ろから数人が近づいてきている。
「軽井沢さんに、みーちゃん……あ、桔梗ちゃんも一緒なんだ」
「うん!」
……櫛田がいる時点で偶然じゃないな。
おそらく綱吉と映画を見るついでに俺の監視も兼ねてるのだろう。
「あら、綾小路君達も来てたの?」
「……まあな」
軽井沢から知らじらしい事を言われた。
お前も偶然じゃないだろうに。
「約束してたの?」
「軽井沢さんとはね。みーちゃんと櫛田さんとは途中で会って一緒に来たんだ」
「そっか」
「あ、ねぇねぇ! せっかくだから一緒に見ようよ〜♪」
佐藤がグイッと綱吉の腕を両手で掴んだ。
「ふあっ!?」
するとその後ろで、愛里が悲鳴に似た声をあげた。
「わっ、急にどうしたの?」
「えへへ〜、別にいいでしょ?」
何でもないことのようにさらっと言う佐藤だが、顔は赤くなっている。……本当は照れくさいのか?
「……皆、中に入ろう」
嫌そうな顔をした啓誠は、一人で先にチケットを見せて中に入ってしまう。
(啓誠は騒がしいのが苦手だったな……)
明人や波瑠加も啓誠に続いて中に入っていく。沢田グループは綱吉以外ソロプレイヤーだから仕方がないか。
……訂正する。綱吉と俺以外な。
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