体育祭当日A 〜牙を向く悪意〜
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「……ふっ」
AD連合が後ろに倒れてしまうと、龍園君がニヤリと笑う。
現在、綱の中心に付けられた白旗は若干こちら側に寄っている状態だ。しかし、今の俺達は倒れているから綱には全く力がかかってない状態。
「よし、今だぞお前ら。全力でひっぱれ」
龍園君のその一言で、Cクラスは再び綱を掴み引っ張り始める。こちらは誰も綱を引いていないので、いとも簡単に白旗がBC連合に近づいていく。
「くそっ! させねぇよ!」
急いで立ち上がったAD連合も綱を掴んで引っ張り始める。
だが、すでに白旗は白組の陣地に侵入してしまっていた。
??ピイッ!
「白組の勝利!」
結局、綱引きは白組の勝利に終わってしまった。
「おい龍園! なんだあのやり方! ふざけてるのか!?」
「はぁ? ふざけてなんかねぇよ?」
「いきなり力を抜くとか、相手が怪我する可能性もあるし、負ける可能性だってあるだろ!」
「実際には勝っただろ。なんの問題もない」
「ぐっ……」
今のCクラスの動きには仲間のBクラスも憤ったのか、試合終了後すぐに1人の男子が龍園君に文句を言いだした。
「くそ、くそが!」
俺の後ろでは、須藤君が地面を何度も強く踏みつけている。
またも龍園君の卑怯な策略に憤慨しているんだろう。
そんな須藤君に、葛城君が近づいて行く。
「やめるんだ須藤。向こうのやり方は褒められたものではないが、ルール違反ではない」
確かに、綱引きのルールに「力を緩めてはいけない」とか「綱を離してはいけない」という項目はない。
「でもよ!」
「お前が憤慨するのも龍園の作戦の内かもしれないぞ。お前の体力を削ろうとしてるのかもしれないだろ」
「……ちっ!」
葛城君のおかげで、須藤君はテントへと帰っていった。
俺もテントに帰りながら、葛城君にお礼を言っておく事にした。
「葛城君、須藤君を止めてくれてありがとうね」
「気にするな。俺達は団体戦で殆ど役に立てていないからな。……それより、背中は大丈夫か?」
棒倒しでの事を気にしてくれているのか、葛城君は心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「うん、全然平気だよ」
「そうか。沢田は心も体も強いんだな」
「あはは、そうだといいな」
顔に笑顔を貼り付けながら、頭の中では龍園君の策略について考えを巡らせていた。
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